三菱自動車の「焼け太り」を非難できない理由 日産の傘下入りは虫がいいが利点も大きい
一方、日産側の意図はこうだ。
「すべての決定は、デュー・デリジェンスの後に行うが、今回、早期に覚書として記者会見に望んだのは、三菱自動車がみずからを冷静に分析し、情報を開示したことが提携を選んだ最大の要因だ。これまで、5年に渡るパートナーシップを通して、オープンな対話もしてきたし、なにより、三菱自動車の潜在力を信じている。日産のサポートによって、より早い問題解決を期待する。
第二に、効果的に手を結ぶことで、日産側にも相乗効果がある。例えば、三菱自動車の東南アジアでの業績は日産を上回り、SUV(スポーツ多目的車)やピックアップトラックで素晴らしい業績を収めている。最後に、日産も以前に困難な時期があり、三菱自動車を取り巻く状況を理解できる点だ。早期に日本車メーカーがサポートを表明し、問題の解消に向かう道筋をつけることで、取引先、ディーラーまで含めて、不必要な不安を解消できると考えた」(ゴーン氏)
当然、日産側が3分の1の役員を任命でき、日産側が合意しないと、三菱自動車が何もできないことは理解している。しかし、これは力関係を示すものではなく、三菱グループに属する他の株主をまとめれば、50%以上の出資になっている。日産は三菱を絶対的に支配できる過半数超の株式を持つワケではない、「支配ではなく、力をあわせることを示した持ち株の割合だ」と、ゴーン氏は説明する。
ゴーン氏は益子氏へ多大な信頼を寄せる
もちろん、財務面も考慮したというが、何よりも、三菱自動車と益子会長に対して、ゴーン氏の信頼が厚いことが基盤にあるようだ。
「三菱自動車への信頼に加えて、益子氏は信頼に値する人物であること、益子氏が『これだけの問題がある』と明示したことを信頼しての決定だ。トップ間の信頼、財務上における両社のメリット、日本企業に関する共感、周囲の困難を考えて、今回の協業を引き受けた」(ゴーン氏)
ただ、益子氏のコメントで気になったのが、日産からの技術支援も望んでいる点だ。過去には「ランサー」や「パジェロ」といった本格4WDに秀でていた時代もあり、エコカーでは、EVの「アイミーブやPHV(プラグインハイブリッド車)の「アウトランダーPHV」を短期間で開発した実績もある。
今回の燃費に関する不祥事も、ひとえにエンジニアのせいというわけでもない。組織として無理難題を通す体質が問題であり、燃費目標として掲げられた数値を達成できないことを正直に報告できる風土がありさえすれば、ダイハツ工業に負けても、他社と比べて燃費性能が極端に見劣りするわけではなかったからだ。
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