慢性的な電車の遅延問題は、解消できるのか 利用者が滞留する駅ホームの構造にも課題

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駆け込み乗車の防止や整列乗車など「利用者との協働」も遅延対策として挙げられている(写真:ひでと / PIXTA)

また、短時間の慢性的な遅れの7割が利用者に起因していることから「鉄道利用者との協働」も対策として挙げられている。

乗降に時間がかかることが遅延の原因となっていることから、駆け込み乗車の防止や整列乗車などマナーの向上によって遅延が抑えられるという認識を広め「鉄道利用者の主体的な行動を促すことが重要」としており、例として国と鉄道事業者の協力によるキャンペーンの実施などを挙げている。

利用者それぞれの気づかいで遅れを防げるという考えだ。実際、駆け込み乗車などによって駅での停車時間が延びたり、車内のドア周辺に乗客が固まることで乗り降りに余計に時間がかかったりという例はよく散見されている。

利用者の協力はどこまで?

だが、従来から駆け込み乗車の防止を訴えるPRや整列乗車、さらに車掌や駅員による「立ち止まらず車内の奥までお進みください」といった案内放送は頻繁に行われているが、どのように利用者に「気づかい」を訴えていくかは難しい面がありそうだ。何より、利用者に協力を求めることが対策の一つになるということは、その他のハード的な対策に限界があることの表れと言えなくもない。

ただ、最近ではスマートフォンのアプリなどによって、混雑状況や列車の運行状況がリアルタイムで確認できるケースも増え、混雑した列車や遅れている路線を避けるなどの対策も可能になってはきている。事前に情報が得られることで、以前よりも利用者側での対応がしやすくなっていることは確かだ。

明確な道筋は見えないとはいえ、通勤電車の利用者にストレスをもたらす慢性的な遅れが都市鉄道の政策課題として取り上げられた意義は大きいといえる。最終的には混雑の緩和が最大の対策であることは間違いないが、まずは「見える化」によってどのようにして遅延が拡大していくかなどの分析を進めるとともに、利用者側にも可能な限り協力を求めていくのが遅延解消への道筋と言えそうだ。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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