ポルシェが「4気筒エンジンに回帰」した事情 これは世界的に避けられない流れだ

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「718」はかつてのレーシングカーに与えられた名称だ

自動車に限らず、エンジンには内部で燃料を爆発させる「シリンダー」という重要な機構がある。この数がいわゆる気筒数。これが多ければ多いほど、エンジンが1回転する間の爆発回数が多くなり、キメの細かな回転フィーリングを得ることができる。これはエンジン音の心地良さ、振動の少なさに繋がるとともに、エンジンをより速いスピードで回す高回転化に対応しやすいというメリットも生じる。また、1気筒あたりの排気量拡大は物理的に限界があるため、多気筒=大排気量=高性能とも捉えられていた。

ライバルメーカーを見れば、近年のフェラーリは8~12気筒、ランボルギーニは10~12気筒しかラインナップしていない。ボクスター以前の入門用ポルシェはいずれも4気筒で「914」「944」「968」などが存在したが、ヒットには至らなかった。発売当時500万円台のボクスターが6気筒エンジンを積んで現れたことは、「いつかはポルシェ」の思いを抱くファンには画期的なことだったのである。

4気筒へ回帰するその理由は

それがなぜ、いまになって4気筒への回帰か。そこには複合的な理由がある。ひとつは、小排気量エンジンでもターボ化することでそれまでの多気筒自然吸気エンジンより燃費がよく、パワーがあるエンジンを作れるようになったこと。トヨタ自動車の「クラウン」も日産自動車の「スカイライン」も、かつては6気筒がシンボルだったが、現行モデルでは経済的な2000cc・4気筒ターボエンジンが主流を占めているのと同じ構図だ。

いまガソリンエンジンは、筒内直噴などの燃焼制御技術とターボの進歩により、小さな排気量でも有り余るほどのパワーを出すことができる。いっぽうで、燃費低減のためにはエンジンの効率化が欠かせない。そこには排気量の低減だけでなく、気筒数の低減が大きな影響を及ぼす。

そもそもエンジンから燃料を燃やして出力を取り出す過程において、その熱効率は最大で3割少々、ごく普通のドライブなら15%程度がいいところである。つまり燃やした熱量の大半は排ガスから大気に捨てられたり、冷却水に吸い取られてラジエーターから放熱されたりしている。

残りのうち大きいのは機械抵抗による損失。ピストンやバルブの往復運動、クランクシャフトの回転に10%前後のエネルギーが消費されている。ここで、もし同じ排気量のエンジンであっても、気筒数が少なければ、たとえばピストンリングの摩擦力やバルブ駆動数の低減により、摩擦によるエネルギー損失は大幅に抑えられる。

全体から見ればわずかに見えるこの数%の節約は、そのまま燃費の節約につながるため、ポルシェに限らず世界のメーカーが気筒数削減に躍起になっているのだ。実用小型車の世界では高い技術を誇るイタリアのフィアットは、売れ線コンパクトカー「フィアット500」の主力エンジンを2気筒にしてしまった。エンジン屋を自認するBMWも、1シリーズや2シリーズには3気筒エンジンをラインナップしている。

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