一部上場メーカーの社員時代は、年収400万円。新卒入社した会社でもいじめとパワハラのターゲットになって、29歳で逃げるように会社を辞めている。転職活動に失敗。唯一、採用されたのは非正規の介護職だった。正社員を辞めてから貧困生活が始まる。退社をしたのは4年前、収入は半減、現在の年収は170万~210万円程度だ。彼女はある新興宗教の熱心な信者であり、ギリギリの生活を強いられても地元に帰るつもりはないという。
社会人10年目で貯金0円
つねに財政は厳しい。14万円の手取り金額から6万円の家賃を支払うと、残るおカネは8万円。携帯代や光熱費も含めた可処分所得は年間108万円しかない。相対性貧困に該当する低収入だ。現在、単身女性の33%(国立社会保障・人口問題研究所調べ、2012年)が貧困と言われている。大学院を卒業して社会人になって10年目に突入したが、貯金はゼロである。
「毎月のかかるおカネは、家賃6万円で携帯代1万円ですね。電気・ガス・水道で1万円くらい。あとは県民共済が月2000円。食費はあまりかけません。近くに5キロ1400円のお米を売っているお店があって、そのお米を買います。朝ごはんはバナナで、お昼にはご飯を炊いておにぎりとか。たまにちょっとだけ、おかずを買う。夕食は野菜炒めとか、適当に作って食べます。会社を辞めてから牛肉は買ったことないです。気が向いたときに豚肉か鶏肉を買うくらい。ぜいたくは、近くにあるのでたまにサイゼリヤとか。あとiPhone6くらい。貧乏とは思うけど、14万円あれば十分に生きてはいけますよ」
取材時は晴天の13時。外に出れば、青空が広がる。なぜか、部屋はカーテンを閉め切っている。暗く、じめっとしている。暗くてわかりづらかったが、よく眺めると両腕にリストカット痕があった。古い細かい傷痕が何十カ所とあり、左手首の1カ所だけ大きな縫い傷が目立つ。
「全部、学生時代にやったもの。私、子供の頃からずっといじめられて、大学生のときたくさん切っちゃった。いじめは社会人になってからひどくなって、4カ月前に今の職場に就くまでずっとそんなことばかり。怒鳴られたり、いじめられたり。精神的に追い詰められてリストカットを繰り返した。けど、今の宗教を始めて自分を傷つけることはなくなりました。大きな傷は、大学4年生のころに本当に死のうと思ったとき。もう12年前のこと」
ある新興宗教の熱心な信者だった。取材に同行した女性編集者もさっそく勧誘を受けた。消えない昔の自傷は、誰にも見られたくないと思っている。普段は長袖の服と髪の毛で傷痕を隠す。現在、働く工場は作業着、帽子とマスク着用が義務なので周囲にバレていない。
国立大学大学院の卒業証書を見せてもらった。証書には、彼女の名前が記されていた。日本有数の国立大学院を卒業した高学歴女性が、どうして自傷を抱え、誰でもできる作業である低賃金の食品工場で働き、貧困状態から抜けられずにギリギリの生活を送るのか。
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