「地震は予知できない」という事実を直視せよ 国の地震予測地図はまったくアテにならない
大震法に定めた警戒宣言は恐ろしい経済的破壊力を持つ。発令されると、東海地方で新幹線、高速道路、学校、工場などすべてが事実上、止まってしまう。警戒宣言を無視するのは法律違反だ。
ただ、警戒宣言発令後の食料品などの物資輸送についてはほとんど誰も考えていないようであり、混乱を招くだろう。警戒宣言実施のコストは日本のGDPからざっと計算して、1日当たり数千億円単位に及ぶ。
政府ははっきり示していないが、大震法を実施した時の社会経済への壊滅的な打撃は十分わかっているようであり、適用する見通しはなさそうだ。それでも、メンツと予算の獲得のために法律を廃止できないのだろう。なぜなら、東海地震を前提にしたインフラ整備及びその予算は、担当する政府部局、自治体、関係業界、政治家など多くの人々にとって大きなメリットがあるからだ。つまり、大震法はゾンビのようにいつまでも存続するだろう。
上述を踏まえると、国は間接的に1995年に正確な予知はできないと認めたと言えるだろう。だが、いまだにそのことは一般に広く知られていないように思える。この件に関しては拙著『日本人は知らない「地震予知」の正体』(双葉社)でより詳しく解説しているので、関心のある方は参照されたい。
地震調査研究推進本部の「リニューアル・オープン」
1995年に旧「地震予知推進本部」が「地震調査研究推進本部」に名称変更されたが、地震調査推進本部の主要メンバーは以前とほとんど変わらなかった。唯一の変更点は地震のハザード・マップ(確率的地震動予測地図)を作成・公表するということだった。
そのハザード・マップを、実際に起きた大地震と重ね合わせてみると衝撃的な事実がわかる。今後30年のうちに震度6弱以上の地震に見舞われる確率が極めて高いとされている、南海・東南海・東海地方や首都圏では、1990年以降死者10人以上の地震は起こっていない。実際に起きた震災は、比較的安全とされた地域ばかりだった。この地図はハザード・マップではなく、“外れマップ”と呼ぶべきだ。
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