東洋製罐とホッカン、「元サヤ」に収まる事情 包装容器トップ・東洋製罐のリストラが起因

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こうした環境変化に加え、経営統合の直接的な決め手となったと見られるのは、2016年3月期に行われた東洋製罐HDの中核子会社・東洋製罐における希望退職者の募集だ。東洋製罐は包装容器の中でも主要な飲料缶で3割強と断トツのシェアを握るが、それでも経営は厳しく、2015年3月期に営業赤字へ転落していた。そのため2015年10月に45歳以上の社員及び再雇用者550名程度を対象に希望退職の募集を発表、結果として想定を上回る716名の募集が集まった(退職日は2016年3月末)。

同社にとって、リストラは1931年以来で実に85年ぶり。希望退職の募集発表後に行われた決算説明会で中井社長は、「今回は東洋製罐が対象だが、次どうなるかはわからない」と追加リストラの可能性も示唆していた。なおリストラ費用と生産設備の集約を合わせ、同社は2016年3月期に約80億円の特別損失を計上する見通しだ。

両社の「統合比率」は未定

危機感が背中を押した今回の経営統合だが、統合による効果はまだ見えない。会見では生産・販売・調達・グローバル展開などでの連携を強調したものの、具体的な内容や時期、数字目標などは示されなかった。東洋製罐HDの中井社長は「まだお互いの技術の内容をわかっていない」とも漏らしている。売り上げを伸ばしていくというよりも、業界が縮小均衡を迫られる中、コスト構造の合理化に重きを置いているという印象を受ける。

統合の中身について流動的な面も多い。まずホッカンHD株に対し、東洋製罐グループHD株が何株割り当てられるかの統合比率が決まっていない。株式交換のスケジュールについては、「公正取引委員会への届出や許認可の取得などで遅れや困難な自由が発生した場合変更される可能性がある」と、詳細を詰め切れていないことを明らかにしている。

経営統合後の東洋製罐グループHDがどのような商号になるかも未定だ。経営陣は東洋製罐HDの中井社長が代表取締役となり、ホッカンHDの工藤社長が取締役副社長となることだけは決まっているが、それ以外はこれから。今後統合推進委員会・統合準備委員会で詳細を決めていくとしている。

長年の時を経て、”元サヤ“に収まろうとしている両社。ある大手飲料メーカー関係者は「コスト削減のためにペットボトルの内製化率はここ数年高まっているし、これからも高めていく」と語る。包装容器メーカーに逆風が吹く中、はたして経営統合は吉と出るのか。二度目の離婚とならぬよう、慎重な舵取りが求められそうだ。

二階堂 遼馬 東洋経済 記者

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にかいどう りょうま / Ryoma Nikaido

解説部記者。米国を中心にマクロの政治・経済をカバー。2008年東洋経済新報社入社。化学、外食、ネット業界担当記者と週刊東洋経済編集部を経て現職。週刊東洋経済編集部では産業特集を中心に担当。

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