《プロに聞く!人事労務Q&A》出向が法違反になる場合について教えてください。

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現在のところ出向について明確な法の規定はありませんが、職安法や派遣法に該当しないケースとして、次の目的であれば、社会通念上「業として行われていると判断されない」ことになります。

1.雇用機会の確保
(1) 雇用量の調整(雇用量が過剰と判断されたときに関連会社に出向させ、出向先に人件費を負担させることにより人件費の節約に資する。整理解雇を回避するための一つの手段として実施される。)
(2) ポスト不足対策(中高年齢社員を子会社・関連会社に出向させ、一定のポストにつかせる。)
(3) 高年齢者の再就職対策(定年前後から他の企業へ出向させ、最終的には転籍につなげる。)

2.経営・技術指導
(1) 子会社・関連会社の経営管理、技術指導、技術支援
(2) 経営不振に陥った企業の再建のための支援

3.職業能力開発
(1) 若手社員の人材育成(多様な業務に携わることにより能力開発を図ったり、専門的な知識・技術を習得するために行う。特に子会社から親会社への出向が多い。)

4.企業グループ内人事異動
(1) 経営の多角化の効率的推進(新規事業を行う子会社、関連会社等を設立し、若手、中堅社員を出向させる。)
(2) 人手不足対策(人手不足の子会社に出向させる)
(3) 人材の交流(親子会社間、関連企業間での連携を強化することをねらいとする。定期的に相互間で行うことが多い。)

なお、名目上、以上の4つの目的のいずれかであっても、実態として、事業(収益を計上している場合)として行われている場合は、適正な出向にはならず、また、実質上、労働者派遣とみなされた場合は、派遣法の規制を受けます。

よって、適正な出向とは、前出の4つの目的のいずれかであり、収益を計上しないものであるということができます。

最後に、親会社と子会社の契約が、名実共に「請負業務(民法632条によるもの)」であれば、もちろん、職安法や派遣法の規制を受けることはありませんが、いわゆる「偽装請負」であった場合は、派遣法に抵触することになります。

  ◎いわゆる偽装出向 = 職安法違反(労働者供給事業とみなされる。)
◎いわゆる偽装請負 = 派遣法違反(派遣法の規制を受ける)

 

半沢公一(はんざわ・こういち)
1980年東洋大学経済学部卒業。IT関連会社で営業、人事労務及び派遣実務に従事した後、91年に独立し半沢社会保険労務士事務所を開設。就業規則をベースとした労務相談を得意とする。企業や団体での講演・講義も多い。現在、東京労働局紛争調整委員会あっせん委員、東京都社会保険労務士会理事等を務めている。著書多数。


(東洋経済HRオンライン編集部)

 

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