「想定外に備え、川内原発は一時稼働停止を」 30キロ圏住民調査を行った広瀬弘忠氏に聞く

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まず第一に、2段階避難という想定が非現実的だ。多くの人は避難指示が出ていなくても、原子力災害対策特別措置法に基づく通報などで原発に異常事態が起きていると認識すれば、われ先にと避難を始めるだろう。そうすると渋滞が起こり、避難に必要な時間はさらに長くなる可能性がある。

また、鹿児島県のシミュレーションでは、南九州自動車道が通行止めになった場合でも、代替避難経路としての国道3号線や270号線、県道42号線などにより避難できると想定されている。しかしそれらの道路が通行可能である保証はない。その意味でも「最悪シナリオ」は想定されていない。

伊方原発の事故でも避難困難

――緊急時には自動車での避難が前提とされています。支援が必要な高齢者や障害者については、バスによる避難が計画されています。

バスによる避難が現実的に機能するのか疑問がある。高齢者はバスが来る場所までたどり着かなければならない。崖崩れで道が通れなかったり、放射線量が上昇しているときに被ばく覚悟でバスを運行できるのか。自然災害が原発事故と連動すると、避難もできずに孤立無援状態に陥る。

前出の私どものアンケート結果を見ても、住民がそう認識していることがわかる。避難計画を作っても、いざというときには機能しないのが原発災害を伴う複合災害だ。

――四国電力の伊方原子力発電所(愛媛県伊方町)はどうでしょうか。伊方原発は佐田岬半島の付け根にあります。原発から西側は「予防避難エリア」とされ、そこに住む約4900人の住民は海路による避難が想定されています。

私も佐田岬半島の先端部にある三崎港から対岸の大分県にフェリーで渡ったことがあるが、九州と四国を結ぶ豊予海峡は流れが速い。津波警報が出ていると避難自体が無理だ。港にたどり着くのも容易ではない。伊方町役場は原発から非常に近い距離にあるため、住民の避難誘導は困難だ。

――要するに、原発事故は起きてしまうと対応不能になるということですね。

その通りだ。だからこそ赤信号が点滅している状態では、電力会社は想定外の事象を防ぐためにいったん立ち止まるべきだ。それが原発の一時稼働停止だ。もう一度重大事故が起きたら日本の原子力発電はおしまいになる。目先の利益にとらわれずに判断すべきだ。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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