三菱自動車、燃費不正の先行きは視界不良 グループからの支援は難航も

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三菱自が今後予想される経営難を乗り切るうえで、大きなカギになるのが三菱グループ各社からの支援だ。2000年と04年にリコール隠しが発覚した際は三菱重工業<7011.T>、三菱商事<8058.T>、三菱東京UFJ銀行<8306.T>(当時、東京三菱銀行)の主力3社が中心となって多額の増資を引き受けた。

この支援により、三菱自は13年に累積損失を解消、ここ数年の業績回復で財務体質も改善した。14年6月には、生え抜きの相川氏が社長に就任、前任者である三菱商出身の益子修氏による約9年間の経営再生を受け、SUVと電動車両を軸とした成長戦略に踏み出そうとしていた矢先の不祥事だった。

しかし、グループによる支援ができた当時とは違い、各社には上場企業として高い資本効率や出資に対する説明責任が株主から強く要求されるようになっている。さらに、三菱重は大型客船事業の遅れで損失を抱え、三菱商も資源価格の下落により業績が悪化しており、グループが三菱自に救いの手を差し伸べられる環境にはない。 

「簡単に支援なんて言ったら、見識が問われる」とグループ大手のある幹部は三菱自への安易な救済論にくぎを刺す。株主への説明責任が果たせないという指摘だ。「(支援がまとまった)10年前さえ、三菱重の株主総会では、三菱自に対する出資に異論が相次ぎ、総会が紛糾した。いまはガバナンスの考え方がさらに進化している」。さらに別のグループ企業の幹部社員も「三菱自への新たな支援は厳しい」と語る。

行政当局の厳しい対応も

石井啓一国土交通相は22日の会見で、三菱自に対して「長年積み上げてきた日本ブランドに対する信頼・信用を失墜させ、ユーザーに対しても多大な迷惑をかけた。猛省を促したい」と語り、買い取りも含めてユーザーへの「誠実な対応」を要請した。21日には菅義偉官房長官が「極めて深刻な事案。厳正に対応する」と述べ、行政処分の可能性を示唆した。

米高速道路交通安全局(NHTSA)も22日、ロイターの取材に対し、米国で販売した車両に関する情報を提出するよう三菱自に求めたことを明らかにした。

米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は22日、三菱自の長期会社格付けを現在の「ダブルBプラス」から引き下げる方向で検討する「クレジット・ウォッチ」に指定したと発表した。三菱自の株価は燃費不正の発表から3日間で41.6%の急落となっており、今後は株主による訴訟の可能性も否定できない。

 

(白木真紀、布施太郎 取材協力:宮崎亜己  編集:北松克朗)

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