政権交代の研究 自民党は変わったのか?
一方、肝心の経済政策では、社会保障・税の一体改革において3党合意路線を取るため、大所の分野では民主党との違いを打ち出しにくい。09年の総選挙マニフェストで、民主党が「年額31.2万円の子ども手当」や「国の総予算207兆円を組み換え」などと高らかにうたったのと比べると、いかにも地味な印象を受ける。
同党の甘利明政務調査会長は「われわれは、いい加減な政策で有権者の歓心を買おうという毛バリのような政策は打たない。有権者にも、もうだまされないぞという思いがあると思う」と話す。民主党マニフェストへの反省から、実現可能性のない人気取りの政策は影を潜め、イデオロギー的に右寄りの部分が目立っている。
そうした中、「コンクリートから人へ」を掲げる民主党と反対に自民党が今年6月にまとめたのが国土強靭化基本法案だ。「事前防災」の発想から、通常の公共事業に加え、大規模災害時の避難路や施設の確保、医療・福祉やエネルギーの安定的供給の確保などで、10年間で200兆円を投入していくという。
10年で200兆円を投入 国土強靭化法の狙いとは?
法案の取りまとめを担当した旧建設省出身の脇雅史・参議院議員は「強靭化論の原点は大震災。デフレ脱却のためには、今こそ金を使わないといけない。公共事業を増やしたいのではなく、もう一度きちんと政策を作り直し、自民党は変わったということを示したい」と語る。
しかし、強靭化法案に対しては、党内外から「有効需要政策なんて古い話はダメ」(塩崎恭久代議士)、「金融市場の違和感が強い。古いタイプの政策に逆戻りしないでほしい」(第一生命経済研究所の熊野英生・首席エコノミスト)と疑問視する声が上がる。01年度までは10兆円台前半の水準だった国の公共事業費は、現在は年間5兆円規模にまで縮小。地方分と合わせても、年間の公共事業費は10兆円程度だ。仮に10年間で200兆円を投じるとすると、今の2倍の規模で公共事業費を投入していくことになる。12年度予算では税収を超える44兆円の国債を発行しないと歳出を賄えない中、自民党は建設国債発行を中心とした財源対応を示唆するが、どこまで国民が理解を示すかは不透明だ。