政権交代の研究 自民党は変わったのか?
長老引退で進む世代交代 公募候補者にも良しあし
その後、谷垣禎一総裁(当時)を議長に、党内に「政権構想会議」を設置し、党改革のあり方について議論を重ねてきた。同会議は伊吹文明代議士を座長に据え、09年と11年に3回ほど勧告を行っている。
11年の勧告では、国会議員の個人後援会と党の支部組織を区別することを求めた。議員の個人後援会の集合体ではなく、しっかりした組織と指導力を持った近代政党として生まれ変わることが企図されている。
だが、実際には、09年の総選挙大敗が、自民党を図らずも大きく変えたといえるかもしれない。
象徴的なのが派閥の衰退だ。「野党に転落しておカネもポストもなくなり、派閥の力は完全になくなった。これで自民党の体質は明らかに変わった」(落選中の前代議士)。
森喜朗、福田康夫両元首相や中川秀直・元幹事長ら、いわゆる長老議員が相次いで引退を表明し、世代交代を印象づけている。今回の総裁選では長老議員の支持を受けた石原伸晃氏が敗北。派閥やボス議員の力の衰えを見せつけた。今回、幹事長に就任した石破茂代議士は無派閥だ。
公認候補のリクルートも世襲に頼らず、次期総選挙の新人候補者91人のうち、公募で選ばれたのは72人に達する。「選挙を終えて、若手が帰ってくれば、また自民党は面白くなる」(世耕弘成・参議院議員)。特に、前回落選した中堅議員が大量復帰すれば、自民党内のパワーバランスを大きく変える可能性がある。
ただ、安倍晋三新総裁は9月の就任直後の会見で「小選挙区を戦い抜いていくための政党に大きく改革されたかというと、まだ宿題がいくつか残っている」と、党改革が不十分であることを率直に認めている。伊吹代議士も「公募制は基準を作ってやってみたが、現実面ではうまくいかない失敗があった」と述べる。