ナンバー2を軽視する組織はうまくいかない ヤクルト真中監督が語る、勝つチームの秘訣

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そして、大きい意味での野球への考え方という部分だけではなく、試合での細かい采配に関してもストレートに提言してきます。実はここが最もチームへの貢献度が高いところなんです。

例えば、毎日のコーチ会議で彼自身、腑に落ちないところがあったりすると、会議が終わった後に個別に監督室にきてこう言うんです。

「監督、本当は言いたいことあったんじゃないんですか? 遠慮せずに言ってください。監督のやりたいようにやったらいいんですから」

№2がトップの意思決定をサポートする

あらゆることを最終的に決断するのは私ですが、選手やコーチのモチベーションを考え、つい会議でストレートに伝えられない場面もあったりする。そういうときに、彼が私の意思決定をサポートしてくれるんです。本当は決めにくいようなことも、「三木コーチがそう言うなら」という気持ちで迷わず決められますから、頼もしい存在です。

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こんな風に三木ヘッドコーチとは何でも言い合える関係ですので、意思の疎通も非常にうまくいきます。私が何もしなくても、私の言いたいこと、伝えたいことを、三木コーチが他のコーチ陣へうまく伝えてくれます。チームが同じ方向を向くということにおいて、自分以外にもそのビジョンをチーム全体に浸透させられる人間がいるというのは非常に大きいですね。このように、No.2というポジションに、信頼のできる人間を置くということが、組織づくりの肝と言ってもいいでしょう。

では、その「信頼」というのは、具体的に何を指すのか――

私の考えるポイントは二つあります。

第一に、先述した通り、監督と同じビジョンを持っているということです。

プロ野球における「コーチ」という仕事は、極論を言うとチームが勝てなくても自分の生活には影響しないのです。例えばチームの成績が悪くクビになったとしても、他のチームでまたコーチをやるチャンスはあります。私だって、複数年契約を結んだとしたら、最初の年にちょっと気を緩めることだって可能です。

同じ目的を共有しないと勝てない

何が言いたいかというと、目の前に全力で集中しないリスクがあるということです。負けが続いていたり、諦めてもおかしくない状況になったとしても、「勝つ」という気持ちを持ち続ける、そしてそれを選手達に言い続けられる、同じ目的を持っている状態。それが「信頼」できるコーチです。

逆に言えば、監督である私は、まずはコーチとそのような関係性を築くようにしないといけません。それがなければいくら監督が勝ちたいと思っても、チームには伝わりません。

もうひとつは、監督にストレートに提言できること。監督に遠慮してYESしか言ってこないような場合、現場からの声が正しく私まで伝わりません。コーチ陣は現状の采配に選手が不満を持っていたとして、それを聞いているのに監督に伝えてこない。現場のNOが、最後の最後でYESになって伝わってきます。これは非常に危険です。全体の声や、自分自身の意見をそのまま監督に伝えられる人間は、非常に信頼できると言えます。

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