見城徹は「時間に遅れる人」とは付き合わない 「3分で付き合うべきかどうかを決めてきた」

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――見城さんは感想を伝えることで、多くの作家と関係を切り結び、ベストセラー作品を世に出してきたんですね。

岸恵子さんの『わりなき恋』は30万部以上売れたけど、それまで岸恵子さんと全く何の縁もなかった僕が、なぜあの本を作ることができたのか。実は6年ほど前、NHKの元旦の特番で、4人の女性の人生を再現する番組があって、コメンテーターを務めたんです。その番組のメインが岸恵子さんで、あまりにもきれいごとばかりだと僕は感じたから、「この人は全部きれいごとだ、表面的でぜんぜんダメだ」とコメントしたら、それがそのままオンエアされたんですよ(笑)。

――それは、かなり思い切った感想ですね(笑)。

まさか、そのままオンエアされるとは思わなかったからね。これでもう一生会うこともなくなったと思っていたら、ある日、岸恵子の友達という人からファックスが届いた。そこには「あなたは岸恵子を誤解しています。きれいごとの人ではありません。一度会って、ちゃんと確かめてください」とあって、連絡先まで書いてある。それで岸恵子さんに電話をして渋谷で初めてお会いすることになったから、彼女の本を読みこんで、当日、それぞれの作品の感想を言ったんです。

それを言っている時に、岸恵子さんがどんどん僕に引き込まれていくのがわかりました。それで、「岸さんは今、恋愛してるの?」と聞いたら、彼女はその時73歳ぐらいだったけど、「してます」というから「その恋愛を下敷きに岸さんの年齢でしか書けない恋愛小説を書いてください」と言ったら、「書きます!」ということで、『わりなき恋』ができたんです。これはすごくエキサイティングな経験だった。

きれいごとを言っても仕方がない

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――言われた人が嬉しくなるような感想を言う、という単純なことではなく、いかに相手のことを考え尽くし、言葉にするかということですね。

それはそうですよ。きれいごとを言っても仕方がない。相手を刺激する言葉を選ぶんです。

――見城さんは、編集者という枠を超えた仕事をしていると思います。例えば尾崎豊さんの再復活の本を出すに至るまでには、彼の事務所を作ったり、トレーニングメニューまで考えたと。

その人にとって、絶対的に役に立つことが大切なんです。その人生の全てを引き受ける覚悟がないといけない。僕は、本当にいろいろな頼みごとをされるんですよ。子どもをどこどこの学校に入れてくれ、子どもをどこどこに就職させてくれ、医者を紹介してくれという話も多い。僕に何の関係があるのかと思うこともあるけど、何を頼まれても懸命にやる。

なぜなら、それがキラーカードになるからです。頼み事について、僕は100対1の法則と言っています。相手のためにありとあらゆることをやる。「そんなことは無理だ」「困難を極めるな」ということを全部するわけです。それを100積み重ねて初めて、「ここは断らないでくれ」という、たった1つのお願いをカードとして切る。そうしたら相手は断れないですよ。

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