「分散投資」のポイントは卵の格言から学ぼう 新入社員にこそ伝えておきたい「投資の真実」

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そのほかには何があるでしょうか。よく聞くのが「家族は私の財産です」という言葉です。とすると、家族、親や配偶者や子どもたちも自分を支えてくれる資産かもしれません。

そういったものにも「分散投資」の考え方が必要になります。たとえば、自分の勤めている会社の株式を毎月購入する「自社株買い」は資産形成のひとつとして挙げられることがあります。自分が働く会社の株式を持つというのは、自分が一生懸命働いて会社が成長すると、それによって株主としての自分にもメリットがあると考えられます。しかも会社が毎月の投資額の一部分を補助するところもあります。

自分と株式が同じ会社に依存するリスク

良い制度ではありますが「分散投資」の考え方からすると、少し考えておく必要があります。人財としての「自分」と金融資産としての「株式」が同じ会社に依存しているのです。万一、会社が倒産すると、お給料を得る先と金融資産の両方がなくなってしまいます。これでは資産の分散にはなりませんよね。

もちろん、会社が上向きのときには株価も上がるし、お給料も上がる可能性が高くなりますから、両面でメリットを受けるという良い面もあるのですが、リスクをどうコントロールするかという面からみると、要注意と言えそうです。

結婚するときには、同じ会社だと夫婦そろってお給料を受け取る先が同じということになりますね。さらに子どもがどんな会社に就職するのか、まさかみんな同じ会社ということはないでしょうが、そんな視点で就職を考えることも必要かもしれません。もちろん今や働く場所は世界中に広がっていますから、日本だけをターゲットにする必要はありません。家族がそれぞれに世界を活躍の場にしているというのは、金融資産で世界中に投資しているのとどこか似ている気もします。

結婚や家族といったことを金銭面や投資の視点でとらえることは、必ずしも正しいこととは言えませんが、こういった一面もあるということを承知していてほしいところです。

前回のコラムで、私が就職した会社が倒産したことにふれましたが、この時はお給料を受け取る先がなくなり、保有していた自社株は紙くずになり、そして退職金も勤続年数が短かったことからあまり出ませんでした。こうした資産分散の見方は自分の体験からほかの人よりも強く意識しているのかもしれません。

野尻 哲史 フィンウェル研究所代表

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のじり・さとし / Satoshi Nojiri

合同会社フィンウェル研究所代表。1959年生まれ。一橋大学商学部卒。山一証券経済研究所(のちに同ニューヨーク事務所駐在)、メリルリンチ証券東京支店調査部(のちにメリルリンチ日本証券調査部副部長)、フィデリティ投信(のちにフィデリティ退職・投資教育研究所所長)を経て、2019年5月、定年を機に合同会社フィンウェル研究所を設立。資産形成を終えた世代向けに資産の取り崩し、地方都市移住、勤労の継続などに特化した啓発活動をスタート。18年9月より金融審議会の各種ワーキング・グループ、タスクフォース委員に就任。行動経済学会、ウェルビーイング学会会員。

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