日本のソフトパワー 植村和秀著
ジョセフ・ナイのいうソフトパワーは軍事力や経済力でない文化、政治的理想、政策の魅力によって生まれる国際政治の能力だが、著者もほぼ似たような視点から大震災後の日本がソフトパワーを磨くことによって世界に大きな貢献ができると論じている。復興を日本の「国柄」とし、未来と世界へ向けて提案していくために復興を厳密に定義せず、ぼんやりとした復興に、ぼんやりと日本を寄せていくというのが本書の提案だ。
具体的には、事故報告書を含めた原発事故の経験、震災の体験、そして復興への道のりを多言語に翻訳して広く世界に伝え人々の「こころ」を動かすよう努力する。特に環太平洋圏の地震国や火山国との復興を軸とする連携が重要で、内向きでない復興によって復興は持続性を持ちうるという。歴史的教訓として、日露戦争が世界に与えたソフトパワーの大きさと、それ以後の対照的な挫折、大平正芳元首相の政策研究会への考察なども興味深い。(純)
創元社 1680円
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