「美ジョガー」の超過酷なマラソンストーリー 爽やかな笑顔の裏に秘めた、ド根性の理由
それから奈苗さんは、そのまま朝ランを趣味として続けるようになった。朝5時半に起き、早朝から皇居を1、2周するのが日課だそうだ。
やはり、朝の運動は美容法としても重要なのだ。
疲れの限界を通り越した無感覚が病みつきに
もともと超・体育会系の青春時代を過ごした奈苗さんは、朝ランがすっかり日課になった頃、どうせランニングを続けるのならば何か目標が欲しいと思うようになった。
「そして、思い切ってハーフマラソンに個人で出場することにしました。普段のランニングは皇居1、2周で、本番前も15キロ以上は走ったことがなかったのですが、でも、大会になると気持ちが高ぶるので、意外と約20キロを完走できたんです。ランナーズハイというのも大会に出て初めて経験しました」
「ランナーズハイ」という言葉はよく耳にするが、それは実際どんなものなのだろうか?
「例えば、身体のどこかを叩きすぎると、痺れて痛みを感じなくなってしまう感覚です。それまで辛くて苦しかったのが限界を通り越し、それが緊張感と合わさり、何とも言えない“無”の感覚が訪れます」
そのランナーズハイはさらに、癖になる爽快感をもたらす。そしてマラソンの完走も、経験者しか分からない達成感があるという。誰しもがランニングに魅了されていく秘密は、どうやらその快感にもあるようだ。
奈苗さんはその感覚が病みつきになり、いつかフルマラソンにも挑戦したいと思うようになっていった。
そんな折、奈苗さんはタイミング良くフルマラソンの仕事のオファーをもらった。その仕事は、グアムのマラソン大会に参加しレポートするというものだった。急な仕事依頼で、マラソン本番までは1ヵ月程しかなかったが、奈苗さんは体育会魂を刺激され挑戦することにしたという。
他の仕事との兼ね合いもあったが、それから週に2、3回は無理にでも時間を作り練習を重ねた。しかし、フルマラソン初出場としてはトレーニング期間は短く、かなり急ぎ足での準備であったそうだ。
「フルマラソンは約42キロですが、本番までも、実は20キロしか走ったことがありませんでした。でもハーフマラソンのときと同じように何とかなるだろうと思って挑んだんです。しかし、それがかなり大変なことになりました……」
まず何よりも、グアムという島の気候問題だった。グアムは通常60~70%の湿度があるため、水分をいくら摂っても汗がどんどん吹き出し、ランナーは脱水症状に陥りやすい。それは正しい知識や訓練によってコントロールのできるものだが、当時の奈苗さんには練習量が足りていなかったという。
身体が水分不足になると、足の裏がつるという症状が出る。奈苗さんは足がつっては治り、また痛めて、を繰り返しながら走ることになったが、30キロくらいまでは例によってランナーズハイで何とか乗り切ることができた。