ノーベル平和賞のEU、欧州統合の歴史【2】
ギリシャ債務危機をきっかけに、米国発のマネーが、財政統合などで未完成のユーロ・システムを根底から揺さぶっている。ユーロ・グループは市場の圧力を受け、各国の利害対立で10年間進まなかった財政統合に、顔色を変えて取り組みはじめた。
すでに財政規律を相互監視の下に置く、新しい財政条約に調印。批准作業を急ぐ。今秋には、銀行監視を一本化する銀行同盟を作る作業が進められる。こうした基盤が固まれば、グループの財政を共同責任の下に置く共同債の取り入れも、実現が近づくだろう。
市場の激しい攻撃は今後も間断なく続くであろうし、巨大な債務処理には5~10年の年月を要するはずだ。しかし、こうした市場の圧力により、逆に欧州の統合は加速されつつある。欧州はこれまでも数多くの危機に直面し、その度国家の利害対立を克服し、統合へと進んできた。財政統合が進めば、政治統合への距離は短縮される。
今回の危機克服のカギを握るのも、ユーロ導入決定時と同様、ドイツである。ドイツの慎重な一歩一歩が注目される。当時のコールの決断を思えば、ドイツが容易にユーロ崩壊への道を開く選択をすることは考えられない。
(伴野文夫=ジャーナリスト)
東洋経済は本稿を含む欧州連合(EU)や通貨ユーロの理念や成立までの歴史を検証した「日本人のためのユーロ危機入門」(=下写真=)を9月28日に発売している。
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