福島第一の汚染水対策で鹿島が果たした功績 汚染水流出リスク大幅低減に首相から感謝状

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期待した性能を確認するために協力会社の敷地内に専用の試験設備を建設し、確認作業を繰り返した。また、現場では作業をスムーズに進めるために、第一原発構内で比較的放射線量が低い5、6号機付近に専用の製造プラントを建設し、運搬を含めて無駄のない作業ができるようにした。

作業員の被ばく低減を徹底

「作業員の被ばく量低減にも細心の注意を払った」と柳井氏は解説する。2~4号機のタービン建屋周辺は、3号機の水素爆発による瓦礫の飛散などにより、空間線量率が毎時0.5~5ミリシーベルト(毎時500~5000マイクロシーベルト)と、福島第一の構内でも特に高い場所だった。

それゆえ、通常のやり方では短期間での大量の被ばくが避けられないため、タングステン製のベスト着用やコンクリート擁壁の設置などの遮蔽対策を徹底した。そうした努力により、当初想定していた被ばく線量と比べて4分の1程度に抑制。鹿島広報室によれば1人当たり平均被ばく線量は3.69ミリシーベルトだったという。

凍結工法によるタービン建屋とトレンチの間の止水が思うようにいかないなどの苦労もあったが、最後には凍結による止水に成功。工事着手から1年余りで完了にこぎ着けた。

今回の内閣総理大臣名での感謝状授与に際しては、被ばく低減努力や無事故・無災害が評価された。

福島第一原発では昨年、高濃度汚染水(RO濃縮塩水)の処理完了やサブドレン稼働など汚染水対策が大きく前進した。それらのさまざまな対策の中でも、汚染水の海洋流出リスクを大幅に低減させたという点で、海水配管トレンチ封止が果たした役割は大きい。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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