福島第一の汚染水対策で鹿島が果たした功績 汚染水流出リスク大幅低減に首相から感謝状
それが今回、トレンチからの汚染水抜き取りとセメントによる封止により流出リスクの大幅低減にこぎ着けた。原子力規制委員会からも「トレンチについては監視レベルを下げてもいい」(更田豊志委員)という評価を得た。
海水配管トレンチからの汚染水抜き取りおよび封止工事ではきわめて難しい技術が求められた。技術陣の中心メンバーとして関わった鹿島の柳井修司・技術研究所上席研究員は、「タービン建屋に近いことから作業現場では放射線量がきわめて高かった。そうした中で作業員の被ばくを極力少なくするために、充填材の開発から施工の仕方までさまざまな工夫を凝らした」と説明する。
最適な充填剤を開発
その代表例が、水中を最長で85メートルもの距離を流れながら、水の中できちんと想定通りに固まるセメント系充填材の開発だった。
「通常の工事では充填材が流れる距離はせいぜい20メートル。ただし、その場合には地上からいくつもの立て坑を新たに掘って充填材を注入しなければならず、作業員が高線量の被ばくを余儀なくされる。それを避けるために、すでに存在していた立て坑を使って充填剤を注入することにした」(柳井氏)。
充填材の開発に当たっては、セメントやフライアッシュ、水中不分離性の混和剤など既存の材料の配合でやりくりした。というのも、トレンチ内を埋め尽くすために必要な充填材の総量が1万トン以上にも達するため、特殊な材料を使用するわけにはいかなかったからだ。
そのうえで、①長距離にわたって水中を流動すること、②配管やケーブルの周りなどにすき間無く充填できること、などの性能を発揮する必要があったという。
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