日本初のシェールオイル採取--現地ルポ
採掘現場で作業していた石油資源開発秋田鉱業所の山岸裕幸技術部長は、「今回、油を見たことは成果だが、これからきちんと評価していく必要がある。最終的に商業生産できれば本当の成功と言えるが、今のところ未知数が多く何とも言えない。ただ、実証試験を通じて、技術的な知見はだいぶ積み重ねられていると思う」と話す。
少量とはいえ石油が出ることは出たことで、今後は評価作業に入る。このシェールオイルが実際に使えるのか、使えないのかを見極めるわけで、その際のキーポイントになるのが採掘可能量や生産性の問題。採掘のための設備を作ってコストをかけても経済的に見合うかどうかだ。
今回の酸処理テストの評価結果は来年1月までにまとめ、評価がよければ、2013年度から第2ステップの実証試験へ進む。今度は鮎川油ガス田内で新たに井戸を掘り、シェールオイルを効率的に採取する水平坑井掘削技術、水圧破砕技術を試す。シェール層で水平方向に掘り進んだ井戸から地層の割れ目に水圧をかけて石油を取り出す技術で、通常の油田開発よりもコストがかかる。同社が秋田県に持つ由利原油ガス田や申川油田でも同様の試験を行う意向だ。
「実証試験と評価作業は2年以上かかる可能性も高い。評価がよく、商業生産へ行けるとなったとしても、最速で再来年度からだろう」(山岸氏)。当然、評価によって採掘断念となるリスクもある。
同社では現状、今回試験した鮎川油ガス田のシェールオイルの埋蔵量を約500万バレル(約80万キロリットル)程度と推定している。これは11年度に日本国内で生産された石油の総量(約82万キロリットル)とほぼ同じ。国内の石油消費量の1日強分にとどまる。鮎川油ガス田を含む秋田県全体のシェールオイルの埋蔵量は約1億バレルに上るとの専門家推定もあるが、これでも国内石油消費量の約20日分にすぎない。