日本初のシェールオイル採取--現地ルポ
今回、シェールオイル採取に成功したのは、その酸処理テストによるものだ。固いシェールには自然の割れ目が発達していることがあるが、その割れ目が鉱物などで目詰まりしていれば、油の流れは阻害される。そこで酸でその鉱物を溶かすと同時に、割れ目自体を少し拡大し、どのくらい油の流れやすさが変わるかを調べる。使用する酸は塩酸がベースで、少量のフッ素を混ぜる。戻ってくる反応済みの酸は産廃処理を行う。酸処理は在来型の油ガス田では、生産性を改善する手法としてすでに広く用いられている手法だ。
10月1日午前11時50分、鮎川油ガス田の地下1800メートルの女川層に垂直にパイプを下ろし、酸処理した流体のポンプ注入を開始した。翌2日午前9時40分に液体の注入を終了。同日正午から注入した液体の排出作業を開始。細いチューブを通して窒素ガスを坑内へ送ることで、液体を噴き上げるようにして排出する。そして3日午前6時30分ごろ、地上に回収した液体中に少量の石油(シェールオイル)の混入を確認した。
注入した液体総量141.6キロリットルのうち、4日午前7時現在に回収した液体量は52.1キロリットル。回収した液体に含まれた石油の量は6.9キロリットルだった。つまり、地上で勢いよく出ていた液体のすべてが石油ではなく、実際は塩酸水に1割強ほど石油が混じっているにすぎない。その後も地下に残る液体の回収が8日午前8時まで続けられたが、今のところ回収した原油の総量などは公表されていない(9日時点)。
商業生産は最速で再来年度から。断念の可能性も
今後の焦点は、本格的な商業ベースの生産にたどり着けるかどうかだ。