(中国編・第一話)「プータロー」と「プワー」


 ある新聞の対談で、私は対談者から幕末の社会には藩を越えて「横議、横決、横行」という言葉があることを聞き、なるほど、と考え込んだことがある。
 ひとつのシステムが変わろうとしていたときに、藩という組織を超えて志士は議論を行い、行動する。横のしかも共感を持った協働(コラボレーション)。その時代を超えた体験を共有できたと実感できたのも、私が飛び込んだ非営利の世界だった。

この六年間、私のNPOの試みはある意味でその協働の積み重ねだった。日本の政府が取り組む二十数項目の各分野の政策評価を公表し、議論の舞台は日本の地方から国境を越えてアジアに広がった。
 こうした作業にはジャーナリストや官僚、学者、経営者など百人を越える有識者や専門家がまさに手弁当で加わり、数多くの大学生などのインターンがそれを支えている。

そうした現象や光景を目の当たりにして、私の関心はむしろ、そうした試みを可能とする市民社会に移り始めた。そこに何か大きな変化が始まっている、と思うからである。
 P・F・ドラッカーは非営利組織の経営論の序文で、50年代のアメリカは非営利組織の台頭でアメリカ社会の「状況が一変した」と書いてある。

日本ではNPO法が施行されて来年で10年になる。しかし、「小さな政府」が言われながら、この国では民間に公(おおやけ)の受け皿となるべきそうした自発的な変化が十分に始まっているのだろうか。むしろ自由な発意の非営利活動が、官離れができないまま、官業の世界に引き込まれてしまっているのではないか。それが私の率直な問題意識である。
 私が実感するように日本の市民社会や非営利組織には大きな可能性がある。そうであるならば、その可能性をどうしたら発揮できるのか。そうした市民の自発的な試みを活かす社会のシステムをどう構築すべきなのか。それこそ、これからの日本社会の方向を決める大きな課題に違いない。

私の六年間は、ある意味で官製市場との戦いであり、非営利組織の可能性を追い続ける挑戦の日々だった。この連載ではその顛末を可能な限り、明らかにしながら、この時代のテーマに迫り、私なりの答えを出してみたい。


工藤泰志(くどう・やすし)

言論NPO代表。

1958年生まれ。横浜市立大学大学院経済学修士課程卒業。東洋経済新報社で、『週刊東洋経済』記者、『金融ビジネス』編集長、『論争 東洋経済』編集長を歴任。2001年10月、特定非営利活動法人言論NPOを立ち上げ、代表に就任。

言論NPOとは
アドボカシー型の認定NPO法人。国の政策評価北京−東京フォーラムなどを開催。インターネットを主体に多様な言論活動を行う。
各界のオピニオンリーダーなど500人が参加している。


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