気仙沼での医療支援活動で見えてきた課題《寄稿》
阪神大震災では、震災関連死は初年度よりも2~3年目が多かった。仮設住宅の完全撤収には5年程度を要したと聞く。東日本大震災はどうだろうか。気仙沼在住で、自らも被災されながらもボランティアのコーディネートなどに奔走している村上充氏によれば、お年を召された方の多くが自宅再建のめども立たず、復興住宅入居の話もまったく持ち上がっていないなかで、予想もできなかった長期の不便な仮住まいを余儀なくされている。
現在、仮設住宅では、痛みのケア、治療を中心に医療支援を続けている。長きにわたる避難所や仮設住宅暮らしで腰痛や肩こりといった症状が悪化している方が非常に多い。被災された方は我慢し続けるあまり、ご自身でもはっきりと自覚していないことがよくある。そのため、心身一如の発想が不可欠であり、身体的苦痛の軽減がリラックスにつながり、さらには寝たきり、認知症の予防につながるという認識で取り組んでいる。
多くの仮設住宅では、見ず知らずの方々が抽選で市内各地からバラバラに入居した。コミュニティー作りのための仮設住宅の自治会長さんの労苦は大きい。それだけに、イベントや炊き出しなどのボランティアの意義は計り知れない。人と人とのちょっとした付き合いが、リラックスを生み、体調異常の発見にもつながる。
どのような形の支援であれ、第一に必要なのはきちんとした現地ニーズの把握であり、また復興途中の現地医療機関、商店などの足を引っ張らないようにするなどの配慮である。また、仮設住宅と言っても状況にはかなりの違いがある。そのため、平等性にとらわれすぎず、融通を利かすことが必要だ。