野田首相が10月1日、内閣改造を行った。
民主党政権発足後の閣僚人事は、新首相の組閣と改造を合わせてこの3年で鳩山内閣1回、菅内閣3回、野田内閣4回の計8回に上った。
だが、今回の改造は民主党政権最後の閣僚人事と見られる。衆議院議員の任期満了まで残り11ヵ月だが、首相が「近いうちに」という解散の約束を反古にできたとしても、ねじれ国会を考えれば、遅くとも半年以内に総選挙となりそうだ。常識的に見て、野田首相もこの布陣で総選挙に臨む覚悟だろう。であれば、民主党政権最後の閣僚人事には、文字どおり「最強・最善メンバー」で民主党政権の総仕上げを、という姿勢で臨むべきであった。
野田首相は記者会見で一応、「内閣機能の強化」と語ったが、首相の人選からは、民主党政権最後の人事という危機感も、ベストメンバー結集という意欲もうかがえない。小沢グループの離党に同調せず、代表選勝利を支えた野田支持派への露骨な論功行賞と、衆議院の過半数維持のための離党阻止対策を最優先した内閣改造であるのは疑いない。
もしかすると、鳩山首相による支持率急落、菅首相による衆参ねじれ発生の後を受けて政権を担った野田首相は、就任当初から民主党政権の総仕上げという意識は希薄だったのかもしれない。「鳩・菅体制」の野党時代、前原現国家戦略相や松沢前神奈川県知事らと「第二期民主党をつくる有志の会」を結成していた野田首相は、前回もこの欄で触れたように、鳩山氏、菅氏、小沢氏ら民主党の第1世代の早期退場、第2、第3世代への交代による民主党再生を密かに企図しているふしがある。
今度の改造からも、論功行賞や離党阻止対策とは別に、第2世代主導、第3世代の積極起用という隠れた狙いが読み取れる。
政治の現状を見て、国民の多くは「民主党の総選挙大敗、政権交代、二大政党政治の終焉、混迷政治」を予想し、その潮流の中で「民主党の衰退・自壊は不可避」と見始めている。野田首相は当面の政権維持に無我夢中と映るが、一方で次に訪れるであろう混迷政治を見据えて、ここで「第二期民主党」をつくり上げ、それを率いて生き残りを図るという道を探っているのだろうか。
(写真:尾形文繁)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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