クックパッド労組は経営にモノ申せるのか IT大手で異例の誕生、その権限と存在価値

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一方、労働時間の短縮や職場環境の改善といったような、抽象的かつ継続的な要求を実現させていくような場合には、裁判で「白黒をつける」ことが解決法ではないので、労使の「交渉」によって合意を図っていくために労働組合を結成することが妥当な手段であると考えられる。なお、労働組合は加入者数が多ければ多いほど交渉力は強まるが、2人以上の労働者が賛同すればいつでも結成することができ、団体交渉権の付与など、法律上の保護が与えられる。

1人でも加入できる合同労働組合「ユニオン」

3つ目は、合同労働組合(通称「ユニオン」)である。

中小企業では労働組合が存在する会社は少なく、また、パートやアルバイトが多い職場の場合では、さまざまな背景を持つ個々の足並みをそろえることが難しいため、企業内で有志自発型の労働組合を結成するにも困難が伴う。

そこで、中小企業の労働者や非正規労働者の場合は、職種や地域ごとに存在する、1人でも加入できるユニオンに加入することが多い。コンビニエンスストア、サンクスのアルバイトであった高校生が、ブラックバイトユニオンに加入して、1分単位で残業代を支払うという労働協約を締結したことは記憶に新しいであろう。

労働者の非正規化が進むのに伴い、このようなユニオンの存在感が増している。ユニオンは企業内労働組合のように会社との利害関係がないため、ユニオンから団体交渉を求められた場合、会社側にとっては、交渉はハードなものになることが多い。なお、統計的なデータを見ても、労働組合の組織率は全体として低下しているが、パートタイム労働者に関しては労働組合員数、推定組織率ともに増加傾向にある。

従来型の企業内労働組合は縮小傾向にあるものの、働き方の多様化を反映し、有志自発型の労働組合やユニオンは今後も増加していくのではないだろうかということである。

そもそも一般論として労働組合は経営に物申せるのだろうか。

労働組合には団体交渉権が認められており、使用者は労働組合からの団体交渉を拒絶できない。ただし、この団体交渉権は、無制限に認められているわけではなく、使用者が応じなければならないのは「義務的団交事項」に限られる。

義務的団交事項とは、団体交渉を申し入れた労働者の団体の構成員たる労働者の労働条件その他の待遇、当該団体と使用者との間の団体的労使関係の運営に関する事項であって、原則として経営者の進退は義務的団交事項には含まれない。

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