クックパッド労組は経営にモノ申せるのか IT大手で異例の誕生、その権限と存在価値

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まずは旧来から存在する、重厚長大産業を中心とした企業内労働組合だ。自動車、鉄鋼、電機など、20世紀前半までに創業し、日本の高度経済成長を牽引してきた大企業の多くには、企業内労働組合が存在する。春闘での賃上げ、一時金(賞与、ボーナス)交渉などが取りざたされるように、連合を頂点として電機連合、自動車総連など産業別労働組合がそれぞれの上部団体として存在する。

企業内労働組合の特徴は、多くの場合、ユニオンショップ制と言って、労働組合への加入を雇用継続の条件とする制度に基づき、その会社で働く全労働者が加入するものであり、経営側とは基本的に協調路線を保っている。春闘で定期昇給や年間賞与額を決める際、労使で激しく交渉することもあるが、会社と労働組合は実質的に運命共同体であるので、最終的には落としどころを見つけ合意を形成していくのが通常である。

また、企業内労働組合がある会社では、就業規則と並び、実務上の労務管理は労働協約に基づいて行われることが多い。特に重要なのは、労働条件を労働者側に不利益に変更する場合である。就業規則を労働者にとって不利益な方向に見直す場合、労働契約法では不利益を受ける労働者との個別合意が必要であることを定めている。

しかし、従業員数何万人もの大企業で、労働者一人ひとりと合意を取ることは事実上不可能である。そこで、企業内労働組合との間で労働協約を結び、就業規則を労働協約で上書きすることによって、就業規則の内容を変更するという対応が行われる。

労働組合の代表者はその会社の労働者による互選で民主的に選ばれたという前提があるので、労働組合と会社の間で労働協約が成立すれば、その内容が労働者にとって有利なものであれ不利なものであれ、労働組合に加入するすべての労働者を拘束する。したがって、会社側も、企業内労働組合の執行部と協調していれば、労働協約による労働条件の変更が行いやすくなるので、企業内労働組合を無下には扱わないのである。

有志自発型の労働組合

2つ目は、有志自発型の労働組合である。クックパッドで結成された労働組合も、このタイプの労働組合に分類されるであろう。

ベンチャー企業など、もともと労働組合が存在しなかった会社において、有志により労働組合が立ち上げられる場合がある。

近年の例でいえば2015年11月に、EC大手のアマゾン・ジャパンで正社員数名の労働組合を結成されたことが発表された。過去の報道を見るかぎり、「長時間労働が当たり前のように行われ、過酷な労働環境にある」ことが、労働組合結成の背景にあるという。もちろん、これは労働者の意見であり、客観的な事実かどうかは確認ができない。

ただ、労働者が職場環境に問題があると考えた場合、労働組合のない会社であっても、自主的に労働組合を結成して使用者との交渉にあたることができるという事実は知っておきたい。未払い残業代の支払を求めるとか、解雇を撤回させるといったような、金銭の支払いを求める場合や、地位を確認するような場合は、裁判や労働審判に訴えるほうが早いことも多い。

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