太陽電池市場の低迷が招いた四日市の悲劇 国際競争力の強化に躍起
ただ、それらが四日市で投資を実行した決め手ではなかった。エボニックグループは「中国や韓国、台湾も候補地だった」。その中で四日市を選んだ決め手が、三重県と連携した企業誘致態勢の充実だった。
四日市市には「企業立地促進条例」と呼ぶ、企業の設備投資に絡む補助金制度が設けられている。固定資産・都市計画税に相当する金額のうち10億円まではその半分、10億円超の部分は10分の1(限度額10億円)が5年間に渡って補助される。四日市市の工業振興課はエボニックに補助金制度をアピールするとともに、三重県と連携して関係法令に絡む許認可作業の流れを軸に、工場建設の具体的なスケジュールを示した。環境対策など諸手続が迅速にできる支援態勢を提案した。
補助金制度に加えて、日本の法制度は細かくて複雑と見ていたエボニックのハードルは低くなった。コストは高くても、ハイテク企業が集まる日本の生産拠点はアジア開拓にも生かせるとみて、四日市への立地が最善との判断に至った。
そもそも外資系企業が日本国内にこの規模で新工場を建てた例は、ここ最近ではほぼ見掛けない。人口減少で内需が縮小傾向にあるうえ、賃金などのコストも高い日本は敬遠されがち。日本の製造業自体が、海外への生産移転を加速している中で勝ち取った誘致だったが、その灯も消えてしまった。
四日市市工業振興課の担当者は「エボニックに補助金を支払うかどうかは微妙。これから交渉する」という。今回の撤退は四日市市にとって大きな痛手となるだけでなく、日本全体の競争力低下を映しているようでもある。
(武政 秀明 =東洋経済オンライン)
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