新幹線開業の陰に「JR北海道」大幅減便の犠牲 道内各地に広がる「地域切り捨て」の恨み節
根室市といえば、日本有数の水揚げ量を誇る根室港を抱えるほか、海の向こうには北方領土も広がる。日本にとっても安全保障上、重要な戦略拠点というわけだ。そんな根室市は、今回のダイヤ改正についてどう捉えているのか。
「花咲線は通学・通院や観光客の足として、欠くことのできない重要な交通手段。運行本数の削減は受け入れ難いものです。JRの事情も理解できないことはないし、『安全を確保するためにはこうする以外に方法がない』と言われればそうなのかもしれません。とはいえ、正直唐突感は否めなません」と、根室市総合政策室の得能浩志さんは説明する。
花咲線区間では、2015年9月に花咲駅の廃止が根室市側に伝えられた。だが、その際には列車本数削減の説明は一切なかったという。それが、10月に入ってから減便の説明が突然出てきたというのだ。ただ、キハ40系気動車の老朽化は急にわかったことではなく、それを理由に減便を伝えられても、根室市側としては納得できないのも当然と言えるだろう。
花咲線が廃止されれば北方領土問題に影響
花咲線の減便は市民の間に「いずれ廃線になるのでは…」という不安も呼んでいる。ローカル線の中には運行本数削減の結果、利便性を損ない、さらなる利用者の減少を招くという悪循環を生み、末路は路線廃止に陥るという例が少なくない。「北海道新幹線ばかりに力を入れて、利用者の少ないローカル線は切り捨てか」という憤りが地元では渦巻いている。
さらに根室市が懸念しているのは、北方領土との関係だ。「花咲線は北方領土視察者の交通手段として利用されており、返還後には人的交流やインフラ整備に伴う物資輸送などを担う重要な路線になる。現状、根室市として花咲線が廃止になる可能性については考えてもいないが、万が一廃止の方向に向かえば、国際社会に向けて間違ったメッセージを与えることになりかねません」と得能さんは危惧する。
確かに、”北方領土に繋がる鉄道路線”である花咲線の廃止は、領土保全という観点からも好ましくないのは事実だ。いずれにしても、花咲線の帰趨はただのローカル線の問題ではなく、日本という国のあり方にも繋がる重要な問題といえるだろう。こうした状況での減便に、根室市や市民は不安の色を濃くしている。
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