日本一地味な村、阿智村に人が殺到するワケ 長野県の温泉地はこうして蘇った!

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こうして松下さんと武田さんは、「スタービレッジ阿智村」の取り組みを始めた。

3名の観客が瞬く間に6万人に

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その後、さまざまな反対意見も乗り越え、2012年8月1日。「日本一の星空ナイトツアー」の初日を迎えた。

しかし関係者を除くと、参加者はわずか3名。その後も十数名程度の参加が続いた。しかしこの少人数の参加者の反応が、それまでとはまったく違う反応だったのだ。

「凄かった!」「きれいだった!」「感動した!」

温泉郷でいい温泉につかり、美味しい食事を食べて、「癒やされた」「よかった」と思う人は多いだろう。しかし、「凄い!」「感動した!」という体験をした人は、あまりいないはずだ。この顧客の感動は、次第に口コミが広がっていった。

初年度の2012年、集客目標5000人に対して、目標を3割上回る6500人が訪れた。2年目の2013年は2万2000名。2014年は3万3000名。そして2015年はなんと6万人が訪れた。今や阿智村は「日本一の星空の村」として圧倒的なブランドを獲得し、それが阿智村の地域活性化に繋がっている。

「地方創生」という言葉は、何やら難しそうに聞こえるかもしれない。しかし、この阿智村の取り組みは、「地方創生」とは、「地域の魅力を高めること」に尽きるということを教えてくれる。そのためには、その地域にしかない強みの見極めが出発点だ。阿智村の場合は、それがたまたま「日本一の星空」だった。そのうえで、その強みに価値を感じるターゲット顧客と、そのターゲット顧客が求めていることを見極める。

それをすることが、成功する地方創生への「第一歩」なのかもしれない。

永井 孝尚 マーケティング戦略コンサルタント

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ながい たかひさ / Takahisa Nagai

慶應義塾大学工学部を卒業後、日本IBMの戦略マーケティングマネージャー、人材育成責任者などを経て、2013年退社。同年、多摩大学大学院客員教授を担当。マーケティング戦略思考を日本に根づかせるため、ウォンツアンドバリュー株式会社を設立。多くの企業・団体へ戦略策定支援を行う一方、毎年2000人以上に講演や研修を提供。2020年からはオンライン「永井経営塾」主宰。著書に60万部超『100円のコーラを1000円で売る方法』シリーズ、15万部超『世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた』シリーズ(すべてKADOKAWA)など。著書累計は100万部超。

オフィシャルサイト

X(旧Twitter) @takahisanagai

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