不倫漬けの妻…なのに親権「母親優先」のナゼ 裁判所が重視しているのは「母性」ではない

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A.「母性優先の原則」裁判所はさほど重視していない

私自身が離婚調停・離婚裁判などで親権・監護権が争われるケースに関わる中で、裁判所が『母性優先の原則』を重視しているとはそれほど感じません。むしろ現状は誰が子どもを監護・養育しているのかをみて、子どもの成育に問題がなければ、むやみに子の環境を変えるべきではないという『監護の継続性・主たる養育者優先の原則』を重視しているように感じます。

このことに関連して、平成6年に審判があった事例をご紹介しましょう。このケースでは離婚紛争中、父親が子ども(1歳未満の乳幼児)を養育・監護していたところ、母親が、自分を子どもの監護者に仮に指定して子どもを引き渡すように求めました。

「母親の浮気」だけでは、親権獲得に不十分

母親の求めに対して、第1審の家庭裁判所は、子どもの精神的発達のためには母親の監護養育が必要であるなどとして、母親を子どもの監護者に仮に指定する審判をしました。ところが第2審の高等裁判所は、単に1歳未満の乳幼児であることのみを理由に母親を監護者とする判断は相当ではないとして、第1審の審判を取り消したのです。

AさんやBさんの場合、母親の浮気という理由だけでは、親権者に父親がふさわしいということにはなりません。母親が、浮気によって子どもの養育・監護を疎かにし、父親が主に子どもを養育監護しているのであれば、裁判などでも父親であるAさんやBさんが親権者に指定される可能性は十分にあります。

浮気の証拠は、母親が子どもの養育・監護を疎かにしている重要な証拠になりますので、しっかり確保しましょう。また、母親が親権者となることで転校・転園を余儀なくされるなどの事情も、考慮される一つの要素にはなります。

最近は、『僕が子どもの食事やお風呂、寝かしつけ、掃除、洗濯、保育園の送り迎えをしています』という男性のお話をお聞きする機会も増えました。ただ、実際は母親が監護・養育の中心を担っており、夫婦が別居する際には子どもは母親についていくケースが多いようです。

そうすると、母親が子どもを虐待しているなど子どもの成育に悪影響を及ぼすような問題がない限りは、先に述べたように、裁判所が『むやみに子どもの環境を変えるべきではない』と判断して、母親がそのまま親権者で良いだろうとなるケースが多いです。そのため、一般的に『母親優先』→『母性優先』と思われやすいのかもしれません

小田 紗織(おだ さおり)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士を目指し活躍中。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/

 

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