シャープ9月危機!! 経営介入へ牙を剝き始めた鴻海
別の見方もある。西村あさひ法律事務所パートナーの草野耕一弁護士は、あくまで一般論としながら、「原則論としては最終契約を結んだ後に価格の再交渉をするのはおかしい。が、最近では対象企業の業務内容や財務状況に重大な不利益が発生した場合に、一方的に契約を解消することができるMAC(Material Adverse Change)条項を取り入れるケースもある。シャープの案件ではおそらくこのような規定が最終契約に盛り込まれており、それに抵触したのではないか」と推測する。
企業間の契約では、MAC条項のほか、財務状況や訴訟関連などで事前に開示された以外に瑕疵がないことを保証するRepresentation and Warranty(レプワラ=保証表明)や、独占禁止法当局の許可が取れる、双方の弁護士の適法意見書が取れるといったCondition Precedent(契約実行のための前提条件)などの条件が入る。これらに抵触した場合、契約の見直しが可能となる。
そのため、M&Aを専門とする弁護士には、「シャープが見直しを提案したのは何らかの条項に抵触したため」との見解が多い。
しかし、当のシャープの関係者は、「何らかの条項に抵触したわけではない」と明かす。「話し合いの中でそういう方向になった。うちの4~6月期の大赤字のせいで株価が下がったわけだから……出資してもらう立場として、強くは出られない」。
契約書の内容を精査できない以上、真相は外部にはわからない。ただ、シャープ関係者の言うとおりなら、「今回の増資案件の発表を信頼してシャープの株式を買った(または売却を見送った)投資家からの責任追及を免れない」(専門家)。
はっきりしているのは、シャープは8月3日以降、郭董事長の言動に翻弄され、主導権を完全に握られているという事実だ。
弱い立場とはいえ、契約をいったん踏み越えてしまったなら、もはや相手を止めるすべはない。郭董事長は一気呵成に攻めてくる。「シャープは今後さらに無理難題を押し付けられるのではないか」(関係者)との声も少なくない。