シャープ9月危機!! 経営介入へ牙を剝き始めた鴻海
シャープが「8月末メド」としてきた交渉の決着はずれ込んだ。奥田社長は月内にも訪台し、郭董事長と直接協議したいとの意向を示すが、この間、「鴻海は亀山第2工場のパネル引き取りなど協業の具体化や、役員の派遣を要求してきている」(関係者)。シャープにとって抵抗のある提案の連発に、交渉は9月中にまとまらない可能性も出てきた。
「必ず経営に介入する」。シャープに対する郭董事長の発言も過激化している。「われわれはベンチャーキャピタルではない。単なる資本投資はしない」。
これまで曲がりなりにも「対等な協業」を前提としてきた2社。振り返れば、その関係に明らかな変化が起きたのは、4~6月期の赤字決算を発表した翌日、8月3日だ。
この日、郭氏は東京で町田相談役、片山幹雄会長らと協議。「株価を上げるにはどうすればよいか」と問いかけた郭氏に対し、町田氏が価格条件の引き下げを切り出したという。これを受け鴻海は、「1株550円で約670億円をシャープに出資する」という3月末の合意内容を見直す旨、台湾証券取引所のインターネットサイトで公告したのだ。
超・弱腰外交に代表訴訟の懸念
「株価を簡単に見直せるなら正式契約の意味がない」──。
この価格見直しについて、周囲から大いなる疑問が呈されている。
鴻海との業務提携と同社に対する第三者割当増資は、単なる覚書レベルの話ではない。3月27日のシャープ取締役会で決議された正式なものだ。シャープが同日に関東財務局に提出した有価証券届出書には、550円は「企業価値を適切に反映した」と記載されている。
「払い込みまで時間がかかるのは珍しくない。その間に株価が上下するのは当たり前だ。簡単に株価見直しが可能な契約を結んでいたならば、株主代表訴訟ものだ」。長く投資銀行でM&A業務に携わっていた服部暢達・早稲田大学大学院客員教授はこう批判する。