シャープ9月危機!! 経営介入へ牙を剝き始めた鴻海
シャープが郭氏来日を知ったのは、ほんの数日前。来日といってもシャープのためではなく、台湾の経済訪問団の一員として蕭万長・前副総統に随行する旅だ。30日にはポケットマネー660億円を投じた堺工場を“日台連携の証し”として案内する予定だった。
来日、堺視察、そして記者会見。シャープにとってはいずれも「寝耳に水」(関係者)だったが、チャンスでもあった。8月3日から始まった出資条件に関する交渉は、行き詰まっていた。実務担当者同士の話し合いは継続していたものの、肝心の郭董事長が多忙で、テレビ会議の開催さえままならなかったのだ。
鴻海も交渉を前に進めたかった。台湾の投資家からはシャープとの提携について疑問視する声が上がっている。8月中旬時点では、「鴻海側も『月末までに共同声明を発表したい』と乗り気だった」(関係者)。その証拠に、郭氏来日に先んじて、実務担当者を送り込んでいる。
そして迎えた30日。奥田隆司社長、大西徹夫専務、そして町田勝彦相談役らは、午前9時からSDPの会議室に控え、郭董事長を今か今かと待っていた。
しかし、彼らに告げられたのは、「(郭氏は報道陣に囲まれ)堺のリーガロイヤルホテルから出られない」との報。仕方なく、午前中は鴻海の実務担当者らと協議し、郭董事長が工場視察と会見を終えた夕方以降に再開する運びとなった。
実際には、郭氏は15時には堺を離れ、その足で関西国際空港へ直行。奥田社長らと顔を合わすことさえせず、プライベートジェットで離日したのである。
態度硬化させる郭氏 経営参画にも意欲
「幼稚、無知、近視眼」
月が変わって9月1日。郭董事長は、会見欠席と突然の離日について、「日本の報道陣の態度が原因」と釈明した。日台の経済協力の発展のための訪問団を、報道陣が台なしにしたと批判したのである。