インドネシアの官民一体発電所に灯る黄信号 土地収用に対し抗議運動が起きている
さらに、現地ではインドネシア国有電力会社による土地収用手続きの是非が最高裁判所で争われている最中だったにもかかわらず、収用手続きが終わっているとして、1月には反対派住民が所有していた農地に、「出入り禁止」「違反した場合は刑事罰が科される」と警告する看板が次々と設置された。
求められるJBICの説明責任
3月24日には建設工事の本格着工のため、農地をフェンスで囲ったうえ、ゲートを封鎖し農民が出入りできないようにした。
現地の情勢に詳しい国際環境NGO・FoE Japanの波多江秀枝氏は「農民は農作業も困難になり、生活の糧を失う状態に追い込まれている」と指摘する。
プロジェクト遂行のうえでカギを握るのがJBICだ。自らが定めた「環境社会配慮確認のためのガイドライン」に基づき、これまでに反対派住民や事業主体、地元自治体からの聴取を実施してきた。
ガイドラインには、現地国の法令のみならず、世界銀行などへの基準適合を確認したうえで、「日本など先進国が定めている基準またはグッドプラクティス等をベンチマークとして参照する」としている。「適切な環境社会配慮がなされない場合には、融資等を実施しないこともありうる」との記載もある。
そもそも司法判断が確定していないうちから出入り禁止の看板を農地に立てたり、補償手続きも終了していないうちに農作業を制限したことは、権利侵害に当たらないか。
JBICの報道課は、「土地収用の法律にのっとって適法に手続きが行われていると認識している。現時点で具体的な人権侵害の事実は確認できていない」と答えているが、十分な調査が行われているかは、疑問だ。厳格なガイドラインを持つJBICの説明責任は重い。
(「週刊東洋経済」2016年4月9日号<4日発売>「核心リポート01」を転載)
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