移植や縫合なしで損傷神経をつなぐ 東洋紡が医療機器を開発
事故や病気などで神経が損傷してしまったら--。一般的にはどのような治療法があるかご存じだろうか。
まず「自家神経移植」という方法がある。患者自身の健常な神経を採取して、損傷してしまった部位に移植するやり方だ。ただ、健常な部位に傷をつけてしまったり、痛みやしびれが残ったりする可能性がある。もう一つは切れた神経同士を直接縫合する「神経縫合」。これも張力がかかると治癒せずに、知覚異常や痛みが残るケースがあるという。
また、大ケガを負って救急病院に運び込まれた患者を治療する際に、切れた血管や骨をつなぐのを優先するために、やむをえず神経をつながないこともある。
では、移植や直接縫合をしなくても神経を修復できたらどうだろうか。そんな夢のような技術を東洋紡が開発した。9月に発表した新しい医療機器「神経再生誘導チューブ」(=写真=)がそれである。現在、厚生労働省に製造販売承認を申請、厚労省の審査を受けており、2013年春に正式な販売が開始される見込みである。
神経再生誘導チューブを、断裂した神経の欠損部分にはめこみ、固定することで中枢側から神経が、チューブの内腔に沿って伸び、末梢側の神経とつながって機能が回復する。チューブ自体は、体の中に吸収されるポリグリコール酸(PGA)などで構成されているため、人体にほとんど害なく、約3カ月で分解され体内に吸収される。