アップルが生殺与奪の権握る 緊迫!シャープ 

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一にも二にも、アップル

すべてのキャスティングボートはアップルが握っている。それなのに、シャープの経営陣がアップル向けのすべての選択肢を出し尽くしたとは思えない。先日報道されたヒューレット・パッカードやデルの注文という話が出始めているのは事実だろう。しかし、そうした企業からの注文ではアップルの代わりにはならない。私なら、アップルの注文が取れるまで、全精力を費やしてオペレーションの態勢を修正し続ける。今こそ、地道な対応で信頼を取り戻すことが重要。ヒット商品ですべての矛盾を解決してきたシャープのスタイルはホームラン狙いの経営です。しかし、ホームランを狙うための条件を整えること以外に今できることはない。

唯一、ウルトラCがあるとすれば、サムスンです。サムスンとの距離を縮める。本来、堺工場(現・堺ディスプレイプロダクト)が組むべきは、堺製の液晶を搭載した大型テレビを高価格で売るテレビメーカーであり、それは世界にサムスンとソニーしかない。だからシャープはソニーと合弁会社を作ったが、うまくいかなった(注:09年設立、12年解消)。今回、OEMメーカーである鴻海(ホンハイ)精密工業と組んだのは、鴻海を介してソニーから大型テレビの注文が入ると踏んだからだと思われる。

ただ、ふたを開けてみると、この年末商戦の注文はほとんど米ビジオ社向け。シャープの「間接的にソニーとの関係を詰める」という当ては外れた。

鴻海がソニーのテレビ事業を買収すれば話は違ったが、鴻海自身にはそんなビジョンはなかった。本当の狙いは中小型液晶であって、堺には漠然と出資したようにも見える。

シャープと鴻海との交渉はまとまらないと思う。決裂した場合、鴻海は堺を売却することになるが、実際に堺を買うような会社はシャープ以外にない。シャープは1円ででも10円ででも買い戻せばいいだけのこと。ここは強い態度で交渉に当たるべきだ。

そうして一度すべて白紙に戻して、サムスンと何ができるかを可能なかぎり探っていくべきだろう。サムスンはシャープの中小型液晶には興味はない一方で、大型テレビ事業に依然意欲的で、かつ、堺の造る大型液晶の魅力をよく理解している。

事あるごとに事業のばら売りや法的整理が取りざたされるが、これらは再建策ではなく、“どう潰すか”の話にすぎない。シャープの株主なり株主価値なりを残すためにどうしたらいいかという基本に立ち返ったとき、堺工場を所有してメリットがある会社と組むことで、局面を打開していけるはずです。

(週刊東洋経済2012年11月10日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

前野 裕香 ライター

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まえの ゆか / Yuka Maeno

1984年生まれ。2008年に東洋経済新報社に入社し記者・編集者として活動した。2017年にスタートアップ企業に移り、広報やコンテンツ制作に従事。現在はフリーランスライターとしても活動中。

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