浮気夫の「慰謝料減額要求」は、実際通るのか 200万円という提示額に透ける「本気さ」

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ただし、仮に奥様が、不倫相手から慰謝料を受け取った場合には、その分、ご相談者が支払うべき慰謝料が減額される可能性があります。また、ご相談者が奥様に慰謝料を支払った場合には、その一部を負担するよう不倫相手に求める(求償)ことができる可能性が高いでしょう。

不倫と一口に言っても、様々な事情によって、配偶者から請求される慰謝料額は変わります。「相場」として一般化するのは難しいです。

過去の裁判例を見ると、慰謝料額を決める際に考慮される要素は、多岐にわたります。まず、結婚年数や子どもの有無・人数、不倫が始まるまでの夫婦仲の円満さや不倫発覚がどの程度夫婦仲に影響したか、といった夫婦間の事情。それに加えて、不倫の期間や内容、不倫相手との関係性、さらには不倫相手との間に子どもがいるかなども要素の一つです。さらに、不倫発覚後の当事者の行動などが考慮された判例もあります。

要するに、あらゆる事情、要素が問題になるため、「ここに気をつければ慰謝料の金額が減る(または増える)」というような単純な図式は成り立ちません。

200万円という提示額に透ける「本気さ」

ところで、ご相談者が奥様から提示された200万円の慰謝料ですが、弁護士の目から見ると、この額には奥様の「本気さ」を感じ、警戒します。というのも、日本の裁判所は総じて、慰謝料額を小さめに認定することが多いからです。

200万円という数字はこうした裁判所の傾向も知った上で、「絶対にこの額は勝ち取るべきで、そのための証拠は揃っているぞ」と言われているようにも感じます。いずれにせよ、できるだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。

吉田 雄大(よしだ たけひろ)弁護士
2000年弁護士登録、京都弁護士会所属。同弁護士会子どもの権利委員会委員長等を経て、2012年度同会副会長。このほか、日弁連貧困問題対策本部事務局員など。
事務所名:あかね法律事務所

 

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