デジタルメディアは完全に「呉越同舟」だった GoogleとFacebookへの「対抗戦線」の行方

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競争が拡大するなかで中心的な存在は、もちろんGoogleとFacebookだ。2016年には、この巨大テック企業2社だけで米国のデジタル広告売上の51%を占め、3~10位の8社のシェアを合わせてもその半分に満たないとイー・マーケター(eMarketer)は予測している。1社でこのシェアに対抗することは到底期待できないため、多くの企業が競争力を保つための新たな方法を模索しているのだ。

一部の地域で(特に欧州で)人気の高い戦略は、プログラマティックの共同体を作ることだ。2015年には、「ガーディアン(The Guardian)」「CNNインターナショナル(CNN International)」「フィナンシャル・タイムズ(The Financial Times)」「ロイター(Reuters)」および「エコノミスト(The Economist)」が、プログラマティック広告の売上拡大を目指したパンゲア・アライアンス(The Pangaea Alliance)を共同で立ち上げた。

プログラマティック広告のインベントリ(在庫)とデータをまとめることで、パンゲア・アライアンスの加盟各社は、単独では不可能な規模と品質のデータを広告主に販売できる。その狙いは、ブランドやエージェンシーが提携パートナーの数を増やすのではなく、減らそうとしている状況で、買い手にとってより魅力的な商品を提供することだ。パンゲアの取り組みは好調な出だしを見せており、設立以来、180のエージェンシーを通じて450社の広告主が彼らの商品(在庫)を購入したという。

このモデルが確立された欧州では、フランス、ギリシャ、チェコ、そしてデンマークのパブリッシャーがみな同じようなアライアンスを設立している。また、イギリスのオンライン出版社協会(Association of Online Publishers)も、「ESIメディア(ESI Media)」「デニス・パブリッシング(Dennis Publishing)」「フューチャー(Future plc)」「テレグラフ・メディア・グループ(Telegraph Media Group)」および「タイム(Time)」と同じような取り組みを行って後に続いている。

対照的に、米国のパブリッシャーは、いまのところこのような規模での提携を避けているが、それも間もなく変わる可能性がある。ビデオゲーム、ヘルスケア、ローカルニュース専門のパブリッシャーが独自のアライアンスを設立しようとしていると、この計画に詳しい情報筋が明かしているからだ。

必ずしもうまく行くわけではない

ただし、パブリッシャーどうしの提携がいつもうまく行くわけではないことは、指摘しておくべきだろう。2008年には、ニューヨーク・タイムズ、当時のトリビューン・カンパニー(Tribune Company)、ハースト(Hearst)、そしてガネット(Gannett)が、「クアドラントワン(QuadrantOne)」と呼ばれるプログラマティック広告事業を共同で立ち上げた。だが、このプロジェクトに投資する金額をめぐってパートナー企業間の折り合いがつかなくなり、2013年に終了した。また、Huluと呼ばれる別の共同事業も、それなりの問題を抱えている。

「ガーディアン」のグローバル・レベニュー・ディレクターで、パンゲア・アライアンスの代表を務めるティム・ジェントリー氏は、こうしたアライアンスについて、攻めと守りの両面をもっていると話す。攻めの面でいえば、広告テクノロジーの進化によって、エージェンシーの関心を引くような新しい製品をパブリッシャーが力を合わせて作り出すことが簡単になった。

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