韓国の政党は「空手形」ばかり乱発している 4月総選挙の公約は実現不能なものばかり

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にもかかわらず4月の総選挙を前に、政党はまた国民に「指切りげんまん」と言いながら、小指を差しだそうとしている。公約の核心は、雇用と福祉だ。中央選挙管理委員会が公開した各政党の10大政策目録を見ると、セヌリ党は政策順位1〜3位ともに雇用関連のもの。次は家計負担の緩和、私教育費の軽減、住居安定の順になる。

「共に民主党」は老人基礎年金の拡大を公約のトップに掲げた。次は青年雇用。そして性的に平等な社会実現と経済民主化の推進、家計負債緩和の順になっている。国民の党は公正な経済を政策トップに掲げ、2、3位は政治革新と福祉の拡大を訴えている。青年雇用と老人福祉が次に来る。正義党は「自分の給料が上がる経済」と「自分の雇用がよくなる経済」を政策順位の1、2位に据えた。

選挙スローガンも、端から見るとそのようなものが多い。セヌリ党は総選挙公約の大枠を「雇用拡大、負担軽減、公正な競争、気配り」と定めた。「共に民主党」は「共に成長論」を掲げ、「777(スリーセブン)プラン」を発表している。これは、2020年までに国民総所得(GNI)比で家計所得の割合、労働所得分配率、中間層比率をすべて70%以上に高めるというものだ。

双方とも2月初旬から相次いで公約を発表している。しかし、前回の総選挙や2012年の大統領選挙当時に出されたもの、あるいは他の政党で推進しようとした政策を換骨奪胎、あるいは剽窃したものとも思える公約が少なくはない。与党は野党に向かって、野党は与党に向かって「ポピュリズム的公約だ」「雲をつかむような政策」と非難するが、「どっちもどっち」という非難は避けられない。財源確保をどうするのか、具体的な方案を提示したところもない。一目でわかるような、斬新で革新的な公約はどの政党からも探せない。

高齢化社会を見据えた政策もあるが…

福祉関連の公約を見てもそうだ。ソウル大学社会福祉学科のアン・サンフン教授は「全般的に福祉関連の公約が乱発されている」と指摘する。さらに、「政治家が選挙公約として声高に福祉拡大を叫んだ国で、経済が健全な国はない。韓国が本当の福祉国家に進もうとすれば、減らすべきものは減らし、捨てるべきものは捨てながら韓国の福祉システムを調整する必要がある」(アン教授)。雇用、住居、企業、民生関連公約もまた、華麗なる数字ばかりで中身がないという指摘も多い。

  一方、壮年・老年層の支持者が総体的に多いセヌリ党よりは、野党が老人関連の公約に集中していることも特徴だ。理由がある。4月13日投票日の今回の総選挙は、60歳以上の有権者が30代や40代を超える初めての選挙となる。行政自治省によれば、住民登録統計(2016年2月)基準で、今回の総選挙において60歳以上の有権者は全体の23%程度を占める。人口から見ると、1000万人に肉薄するかつてない有権者層となる。前々回総選挙までは30代、それから14年に行われた統一地方選挙までは、40代が占める割合が最も多かった。

(韓国『中央日報エコノミスト』2016年3月28日号)

キム・テユン 韓国『中央日報エコノミスト』記者

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