ヤクルト真中監督は一体何を改革したのか 低迷チームを就任1年で優勝に導いた秘訣
投手を中心とした守備力。2015シーズンに向けては、ここにフォーカスしてチームを作っていくことを決めました。これで、私の大きな柱となるチーム方針は決まりました。ここからは実際のチーム作りに入っていきます。
チームの負けグセを払拭する
就任当時、強くなるうえで最も大きな課題だったのは、チームに根づく「負けグセ」でした。2年連続最下位で、直近の優勝も13年前だったので、強いチームの文化というものが醸成されていません。序盤で点数を取られて劣勢になると「もう負けるんじゃないか」という雰囲気になり、5月の時点で負けが続くと、「もう今シーズンはダメなんじゃないか」と、どんどん悪い方向へ考えていくのが、「負けグセ」です。
負けるチームには、負けるチームの空気があります。でもよく考えると、プロ野球選手はみんな同じように子供の頃から野球をやって、学生時代を過ごし、ドラフトで指名される。スタートラインにそんなに違いがあるはずがないのに、なぜいつも最下位なのか。それは、極論するとプロ野球選手は「チームが勝たなくても生活をしていける」からなんです。
チームが優勝しなくても、自身の成績がよければ給料は上がりますから、十分生活をしていけます。でも、チームが強くなって、優勝争いをして、その中で勝っていく喜びというのは、自分の成績を残していく以上の喜びがある。それをみんなで味わいたいし、チームが強いと、チーム関係者や家族、関わる全ての人が喜んでくれる。
経験したことのある人にしか分からないですが、これは至上の喜びです。
だから、「勝とうよ!」というメッセージをとにかく“しつこく”言い続けました。最後の最後まで、「勝つ」ことに執着する。小さなことですし、当たり前のことかもしれませんが、とにかくこれを言い続けることだと思っていました。前年の成績が60勝81敗3分。借金が約20。つまり、10勝すればイーブンでAクラスに行けるのです。長いシーズンを考えれば、10勝分というのは本当に小さな差なんですね。
「あの試合、もう少し粘ることができれば」
「あそこでつまらないエラーをしなければ」
そんな小さなことの積み重ねで、10勝は手に入る。点を取られたらこれ以上点を取られないこと。点を取れるときは取れるだけ取っておくこと。本当に当たり前のことです。ただ、当たり前のことは日頃から言い続けることで選手の耳に残っていきます。なので、とにかく言い続けること。最後の最後まで粘って、勝つ。そのことで、シーズン中の小さな粘りが生まれて、今まで拾えなかった試合も拾え始めました。そういう小さな自信の積み重ねが、優勝という成果にたどり着けたのだと思っています。