ヤクルト真中監督は一体何を改革したのか

低迷チームを就任1年で優勝に導いた秘訣

チームとしては「勝つ」ということを徹底的に言い続けることでその意識を植え付けました。そのうえで、各個人へはキャンプインの段階から「+α」というリクエストをしました。例えばピッチャーであれば、新たな球種を覚えるとか、野手であれば、走塁に関しての技術を磨くとか、今までになかったことへのトライです。

「俺はもうベテランだから」

「俺には走塁は期待されていないから」

という、「“できない理由”を探すな」ということです。何歳からでも、いつからでも、新しいことに挑戦してみろ、というメッセージを伝えました。これは、私自身の性格にも由来するかもしれませんが、昔から「ゲンを担ぐ」ということをやりませんでした。

たとえば、ある靴を履いて球場に行った試合、ヒットを3本打ったとします。翌日、「またこの靴履いて行ったら3本打てるんじゃないか」と考えてしまいがちですが、私の場合は「違う靴だったら4本打てるんじゃないか」という、新しい可能性に挑戦するのが大好きでした。「常に新しいことを」を試して自分自身が成長してきましたから、とにかく選手には新しいことにトライしてみることをすすめてきました。

最も重要なことは、個々の「自主性」

新しいことへのトライ。それをやりやすくするうえで、監督として一番に意識したことは、「自主性」です。自ら考えて、自分が上手くなるために練習する。これをやりやすい環境をつくることに徹しました。

しかし、この方針を掲げたときはかなり批判もありました。なぜなら、前年最下位のチームが「自主性」ですからね。ただでさえ弱いとされているチームなのに、自分たちの判断で練習しても強くなるわけがないという声も確かにありました。それでも、私は自主性を推し進めました。

なぜなら、この自主性こそが一番キツイということを知っていたからです。自分でやるとなると、誰からも指示されませんからひたすら考えなくてはなりません。そして、結果により責任を持つようになります。

そして私は、自主性を定着させるためにコーチ陣へもあるリクエストをしました。それは、「用がないならグランドにいないでくれ」ということです。コーチもみんな選手経験があります。自分の課題があって、それに取り組んでいこうと練習している時に、コーチに何かを教えられたら、それをやるしかありません。

それは時に負担になる時もあるということを、選手時代に体験しているはずなのに、コーチになってそれをやってしまう場合があります。コーチになると、「教えるのが仕事」となって過剰に仕事をしてしまうパターンです。

しかし、それは多くの場合逆効果を生みます。ですから、「練習が終わったらとっとと帰ろう」という指示をしました。これを体現するために、誰よりも私が真っ先に帰ることを徹底しました。「とはいえ、監督がいると帰りづらい」という声が出るのが分かっていましたから、私は意図的に誰よりも遅くグラウンドに来て、誰よりも早く帰りました。

性格的には、早めに来ていろいろやりたいことはあるんです。でも、「選手の自主性を確保する」というものを、まずは自分が一番にやる。これは私の起こした違いですね。

確認しておきますが、それまで2年連続最下位のチームです。そのチームの監督が、練習が終わり次第真っ先に帰るんです。かなり勇気のいる行為のように思えますが、私には確信がありましたからね。自分で考えて練習した方がうまくなることと、それはコーチがグラウンドにいると起こりにくいということを。

(取材協力:高森勇旗)

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