瀬戸際の日本航空再建、外資登場でも混沌
航空自由化などオープンスカイ政策などを見据え、外資との提携拡大にメリットがあるという見方は両者とも共通するが、その思惑は完全に一致していなかった。しかし、政府保証までついた異例の緊急融資を受けている以上、表向き国交省の意向を無視できない。西松社長は「(資本提携先の絞り込みは)10月半ばがデッドライン」と話している。
ただ、日本では航空法による外資規制で3分の1未満までしか出資できず、主導権を握られることはない。かつて経営危機にあった日産自動車が仏ルノーからの出資を仰ぎ再建したスキームとはまったく異なる。実現したところで、どこまでJALの経営改善につながるかは不透明だ。さらに「海外勢は(出資を足掛かりに)10年に拡張される成田と羽田空港の発着枠獲得を優位に進めたいだけだろう」(国内証券アナリスト)との指摘もある。その思惑も働いてか、エールフランスKLM航空や複数のアジア系航空会社など、出資候補として浮上する外資系は枚挙にいとまがない。
民主党内には強硬論も 新政権発足で波乱含み
外資との提携交渉に先立ち、JALは航空貨物事業で日本郵船との統合協議入りを8月に発表した。ただこれも、国交省の後押しがあったからこそ。日本郵船は同事業で全日本空輸(ANA)と統合を05年に解消しており、実現には疑問符がつく。
もし破綻となれば所管の責任問題に直結するだけに、何が何でも潰せない。再建計画がまとまり切らないうちにその一端が次々と明るみに出るのは、国交省のしたたかな“アドバルーン戦略”とも見て取れる。
だが、新政権誕生で国交省のもくろみが狂う可能性も否定できない。民主党内部には「外資が入るぐらいなら国が救済するという理屈で、政投銀の融資を引き出そうという国交省のやり方はとんでもない」との声もある。ある議員は「米GMのような法的整理も選択肢。政投銀が追加融資に応じる場合は間接的に税金で支援することになり、税金の無駄遣い撤廃を掲げる党方針に反する」とし、その旨を菅直人代表代行に伝えたという。