09年夏の北米興行ランキングから見えてくる“ドル箱映画の方程式”《ハリウッド・フィルムスクール研修記6》
(4)ロマンティックコメディ/ホラー
この2つのジャンルは常に一定のニーズや固定ファンが存在するため、スタジオの収益を下支えする貴重な存在です。躍進はなくとも、堅固な支持基盤で毎回議席を維持し、時にキャスティングボートを握る政党のようなイメージでしょうか。
サンドラ・ブロック主演の『あなたは私の婿になる』や、アメリカで人気のキャサリン・ハイグル主演『男と女の不都合な真実』はいずれも手ごろな製作予算で手堅くヒットしています。
ホラーについては、ランキング表外の20~30位のあたりに4作品が並びますが、製作費との対比で考えれば合格と言える成果をあげています。クラスメートいわく、「アメリカではホラー映画を若者たちが『お化け屋敷』に行く感覚で見に行く習慣がある」そうです。そう考えると、夏にヒットするのもうなずける気がします。
(5)スター
依然としてスターの役割は重要であるものの、この夏の結果は低調でした。北米ランキングの1位~7位までは典型的なスター映画は入っていません。
ベン・スティーラーズ主演『ナイトミュージアム2』、トム・ハンクス主演『天使と悪魔』の2本はアメリカ国内では予想以下の結果だったものの、先に説明した作品知名度も相まってむしろ海外でヒット。
骨太な作風で定評のあるマイケル・マン監督、そしてジョニー・デップ&クリスチャン・ベールを起用した『パブリック・エネミーズ』も国内では予想以下の結果に。豪華なスタッフ・キャストに加え、ジョン・デリンジャーというアメリカ人に愛される(?)犯罪王を扱ったテーマだったので、観客の期待が高すぎたのかもしれません。
上記のような国際的スターを起用した作品はたとえ北米で出遅れたとしても海外市場で取り返せる可能性がある一方、国内スターの作品は失敗すると後がありません。