09年夏の北米興行ランキングから見えてくる“ドル箱映画の方程式”《ハリウッド・フィルムスクール研修記6》
ゆえに映画のマーケティング理論というのはほぼ存在せず、過去消費財で成功したマーケティング企業がハリウッドに進出して、ことごとく失敗した歴史があるそうです。にもかかわらず、私がヒット理論をレポートするというのは正直、無理がありますが、少なくともランキングを振り返ったとき、「5つ」のヒットの要素が見えてきます。
(1)ビジュアル系
「DVDではなく映画館で見ないと損」と思わせる、“ビジュアル重視”の作品。まさに、2009年夏を一言で言い表すならば、ビジュアル系映画の席巻でした。『トランスフォーマー/リベンジ』『ハリー・ポッターと謎のプリンス』『カールじいさんの空飛ぶ家』『スター・トレック』『アイス・エイジ3』『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』『GIジョー』と、北米トップ10のうち7作品が当てはまります。
特に今年の夏、業界で話題となったのは「3D 映画」の大躍進。『カールじいさん』と『アイス・エイジ』の興行収入の約半分は3D対応の映画館によるものでした。私も遅ればせながら、『カールじいさん』で3Dを初体験。
2時間の間、専用のメガネをつけなくてはならないストレスはあるものの、特にスクリーンから客席に向かってくるズームアップは迫力があり、年甲斐も無く周囲の子供たちと一緒に声を上げてしまいました。
このビジュアル系映画は、CG技術や3D対応など常に新たな技術革新が求められることから製作費は150億円以上が相場。ハリウッドメジャー以外は到底手を出すことができないので、彼らの世界制覇にとっては最適な売り物と言えるでしょう。
(2)作品知名度
映画のマーケティングが選挙に近いとするならば、“世襲議員”“タレント候補”が相当します。実は上記のビジュアル系映画も、そのほとんどが世襲(シリーズもの)です。
また、『GIジョー』(パラマウント)は初映画作品とはいえ、ご存知の通り米国ハズブロ社の有名アクション・フィギュアが基になっています。制作費も約1億7500万ドルと高額ですので一作目の利幅は限られますが、既に続編の製作も決まっており、ここから2年生・3年生議員へと歩を進めていく土台はでき上がったといえます。