【産業天気図・銀行業】不況下で基礎的な収益力の低下が続く、金融政策により損失発生は抑制

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 大手行について、個別に見ると、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>の今10年3月期の利益上昇要因は、アコムと米国のリテール・バンク米UNBCのフル連結化とモルガン・スタンレーからの約900億円の配当金でしかない。しかも、前述の2社のフル連結化は、貸倒引き当て費用も増えるため、利益寄与は僅かに過ぎない。三井住友フィナンシャルグループ<8316>も例年ほどの活気はない。ただ、市場運用部隊が相変わらず頑張って、資金利益や手数料収益の低調をカバーしている。経費率が低いのは、こうした局面では下支えとなる強みだ。

一方、みずほフィナンシャルグループ<8411>は、第1四半期に与信リスクをヘッジするCDSの評価損失600億円を計上し、赤字に陥った。実は、CDSは前期には評価益を計上しており、前期は株の減損や与信費用で大赤字だったために、これが見えなかっただけだ。7~9月期(第2四半期)以降、CDSでさらに損失が大きく膨らむことは考え難い。ただ、ヘッジ損で四半期決算が赤字となってしまうベースの収益力の低さが、メガバンクとしてはいかにも情けない。前期よりも、市場運用は回復しつつあるが、引き続き、リテールのみずほ銀行の利ザヤの改善やみずほコーポレート銀行、みずほ証券の手数料収益の向上が課題となる。
 
 新生銀行<8303>とあおぞら銀行<8304>は10年10月の合併を決めたが、難問山積だ。両方の外資系筆頭株主であるJCフラワーズやサーベラスが現状の株価では損失を抱えている状況なので、おいそれと売却して出て行くわけではない。

そもそも、戦略に差異があったにもかかわらず、公的資金が返済できない状態に陥ったがために異例の官庁主導でまず合併ありきと決められたもの。今後、説得力のある経営方針を打ち出せるか、外資系株主に干渉されずに池田憲人新社長(横浜銀行出身で足利銀行を再生)が手腕を発揮できるかが問われる。

(大崎 明子)

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