"無名自治体"がホークス誘致に成功した理由

「地に足ついた提案」で勝ち取った大チャンス

地元の期待を一身に集め開業を迎えたスタジアム

この段階で誘致活動は一つの市だけでなく、地域としての取り組みに拡大する。9月27日に筑後市・柳川市・八女市・大川市・みやま市・三潴郡大木町・八女郡広川町の5市2町からなる「筑後七国」で協力し、誘致を目指す共同声明を発表した。

「人口5万人程度の市でホークスを受け止めるには弱いと考え、周辺地域にも協力を仰ぎました。筑後七国の枠組みは新幹線の駅を誘致する際にできたもので、その後は広域の観光活性化を目的に活動していたのですが、ファーム誘致にも賛同いただきました」(江崎さん)

10月には筑後七国のほか、大牟田市・久留米市・小郡市・うきは市・三井郡大刀洗町も参加して総決起集会を行い、県南地域一丸でファーム誘致への想いをアピールした。

「2つの強み」が、ヤマ場を乗り切る原動力に

当初は借りた土地を又貸しするプランで進んでいたものの、権利関係が複雑になるため、プレゼンの1カ月前に急遽、土地取得へと方針を転換。この迅速な判断ができた背景には、筑後市が持つ2つの強みがあった。

1つは「小さな自治体である」ということ。

「議長をはじめ協力的で、すぐに議会を開き議案を通していただけました。これが大きな自治体であれば、議会を開いて承認を得る段取りだけでも時間がかかったはずです。又貸しプランのままでは勝てなかったかもしれない。今となっては、これが一つのヤマ場だったように思います」(江崎さん)

タマホームの持つ5万㎡に周辺の農地を合わせて7万㎡、その取得にかかった費用はおよそ10億円。土地の造成に掛かる費用を含めると約14億5千万円が必要だったが、筑後市はこれを無借金で確保できた。この「堅実な財政運営」こそが、同市の2つ目の強みだった。

「昔から企業誘致に取り組んできたため、基金が比較的潤沢にあったことと、大規模な開発をあまり行っていなかったので、いわゆる塩漬けの工業団地といった不良資産がなかった。だから借入れなしで資金を用意することができました。借金をすれば将来的に負担が残りますが、その心配がなかったことが、すんなり決断できた大きな要因です」(江崎さん)

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