県立静岡がんセンターの挑戦、病院と企業をつなぎ医療現場のニーズを形に


必要不可欠な仲介役 新規参入組も生み出す

潜在ニーズは想像以上に大きいかもしれない--。6月末の緩和医療学会で、江口氏はその思いを深めた。5000人の参加者のうち813人、実に5人に1人がサンスターのブースを訪れ、バトラーのサンプルを求めたのだ。大田医師の講演会には、定員の1・5倍である500人が来講。部屋に入り切らない受講者が熱心にメモを取る姿に、現場発のニーズが生んだ“新市場”を見た。

現場ニーズに沿った製品開発、とよく言われるが、現実は難しい。現場は診療に忙殺され、医師のアポ取りすら難しい。大田医師が以前いた病院でも、多忙を極める外科医や内科医は口のトラブルにノータッチ。看護師が試行錯誤で口腔ケアを行っているのが実情だった。結果、企業は往々にしてニーズを“想像”して開発することになる。仮に医師の参加を得ても、スピードが遅かったり、アイデアを出した医師の知的財産権が無視されたりと、問題が多い。

双方のウィン・ウィンの関係を築き、新たな需要を生むためには、コーディネーター役が欠かせない。現場から出たアイデアを、忙しい現場に替わり企業や大学に持ち込む。もちろん、知的財産権にかかわるインセンティブは担保する。製造認可など薬事法がらみの煩雑な手続きも手伝う。今回の共同開発でも、ファルマの存在が大きかった。

ファルマは財団法人しずおか産業創造機構に属し、がんセンターと密な連携を取りながら、富士山麓地域への医療関連企業の誘致を進めている。地道な活動が実を結び、医療領域への参入を渋っていた異業種からも、最近では手が上がり始めた。

放射線治療用の直腸脱気チューブを開発した地元の部品メーカー、アオイもそうだ。ステンレス製継手が主力のアオイは、医療機器の販売認可を持っていない。そこをファルマが仲介、別の販売会社との提携を調整し、スムーズな発売にこぎ着けた。新たな挑戦者の登場にほかの企業も奮起し、好循環が生まれていくことが期待される。

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