トヨタ「C-HR」は走りもスタイルも規格外だ 渾身の新型SUVが狙うのは「先駆者」の復権

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そして今回、量産仕様のC-HRの横でいつもよりも笑顔の古場氏に話を聞くと、これまで話せなかった鬱憤(!?)を晴らすかのように饒舌に語り始めた。

「クルマは『走り』と『格好』という私の考えは以前と変わっていません。デザイナーにはダイヤモンドをモチーフにしたパッケージ・プロポーションをお願いしました。デザインのために後席の広さをあえて追求しませんでした。当然、『後席のスペースが……』という話になりますが、それをすべて盛り込んでいくと、結果としてつまらない普通のクルマになってしまいますからね(笑)」

世界中の道を走って鍛える

世界中の道を走って鍛えた

古場氏は続ける。

「走りに関してはタイムや数値ではなく、『意のままに走らせる』ことを目標に、世界中の道を走って鍛えました。ドイツのアウトバーンや欧州のワインディングはもちろん、ニュルブルクリンクでもテストしています。実はクルマの味付けをお願いしたい評価ドライバーがいたのですが、その方はほかのクルマの業務で手掛けることができない……。そこで、私自身も味付けを担当しています」

ちなみにモリゾウこと豊田章男社長もC-HRのテストカーで評価を行なっている。北海道の雪のテストコースで試乗を行なったそうだが、「雪道はドライ路面よりもクルマの素性があらわになります。そんな中での試乗後に笑顔でドライバーシートから降りてきました。評価も気になりました派、この笑顔こそがこのクルマのすべてだと感じました」。

ちなみに、2016年1月に開催された東京オートサロンでGAZOO Racingのニュルブルクリンク24時間レース参戦体制が発表されているが、参戦車両の1台がこのC-HRなのだ。

「86やLFAと同じく『人とクルマを鍛える』ための参戦です。C-HRは『TNGAの熟成』というテーマもあります。そのため、マシンは1.2Lターボをベースに、参戦のための安全装備やサーキットに合わせたサスペンション&タイヤを装着した『市販車+α』という仕様です。5月のニュル24時間に向けて、事前にVLN(ニュルブルクリンク耐久シリーズ)やクオリファイレースに参戦も行ないますが、そこではステアリングも握るかもしれません」

実はトヨタがSUVでニュル24時間に参戦するのはC-HRが初めてではない。2005年にレクサスRX400h(ハリアーハイブリッド)が参戦している。この時、筆者は現地にいたが、完走はしたもののトラブル続出で満身創痍だったのを覚えている。ニュルは何か起きるかわからないが、ハンドリング/操縦安定性に本気で取り組んだC-HRならあるいは、と吉報を期待したいところだ。

日本での発売は2016年後半とうわさされるC-HR。クロスオーバーSUVの先駆者が満を持して投入する渾身の一台は、プリウス以上に「もっといいクルマづくり」が色濃く反映された1台となりそうである。

山本 シンヤ 自動車研究家

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やまもと しんや / Shinya Yamamoto

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“わかりやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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