プリズン・トリック 遠藤武文著

プリズン・トリック 遠藤武文著

何より殺人の舞台といきさつが異色である。

交通刑務所という特異な空間、それも密室で受刑者が殺され、犯人が逃亡し、犯人と死んだ受刑者がどうやら入れ替わっているらしいとわかってくる導入部には引き込まれる。その後も交通事故の被害者や加害者、その家族、刑務官、刑事、保険会社社員、政治家などが交錯し、時に入れ替わり、話は二転三転、よほど注意して読まないと混乱しかねない。

交通刑務所の内情と交通事故の加害・被害をモチーフとした構想とトリックはよく練られている。ただし登場人物が多彩すぎて枝葉の人物にまで冗舌な心理描写があったり、主人公と思った人物がそうではなくなったり、もう少し刈り込んでもよかった。中盤から終盤へと瑕疵が若干目につくのも惜しまれる。

とはいえ、社会性を保ちつつ本格推理に挑戦した意欲は高く評価されてよい。今年度江戸川乱歩賞受賞作で、二重処罰を禁じた憲法39条が重要な伏線になっている。(純)

講談社 1680円

Amazonで見る
楽天で見る

ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • スージー鈴木の「月間エンタメ大賞」
  • 最新の週刊東洋経済
  • ドラマな日常、日常にドラマ
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
コロナでもブームは過熱中<br>不動産投資 天国と地獄

家計のカネ余りを背景に、マンションやアパートなどへの投資熱は冷める気配がありません。しかし、不動産投資にリスクはつきもの。先行きが見通せない状況で、何が優勝劣敗を分けるのでしょうか。現場の最前線を追いました。

東洋経済education×ICT