被災者の住宅支援、まかり通る「恣意的運用」

「町外に転出なら支援対象外」はおかしい

山元町の災害危険区域。多くの家が失われた

国土交通省が被災者の住宅再建のために用意した補助制度が、自治体による恣意的な運用が原因で利用できない事態が起きている。

「がけ地近接等危険住宅移転事業」(通称、「がけ近」)は、もともと土砂崩れなどの自然災害の恐れがある区域から住宅の移転を促すために設けられた制度。安全な場所で新たに自宅を再建するために住宅ローンを組んだ際に、利子相当分について上限を設けて補助するというものだ。この「がけ近」事業は、東日本大震災で津波被害を受けた被災者が住まいを安全な場所に移す際の支援策としても活用されており、宮城県内では10の市町村で2870件(戸)の支援実績がある(2016年1月末時点)。

ところが一部の自治体は、ほかの市町村に転居して住宅を再建した場合に「支援対象外」とする扱いをしている。

宮城県南部の山元町から仙台市内の新興住宅地に自宅を新築した男性(79歳)は、今も自身が受けた扱いに納得できないでいる。

山元町を離れて仙台で住宅を購入

もともとあった山元町の自宅は津波が直撃して基礎から浮き上がり、70メートル先の畑に流れ着いた。建築業者に聞いたところ、「曳家」(ひきや)という工事の方法を用いれば、元の土地に戻すことができると言われた。だが、町が曳家による住宅再建を認めなかったため、やむなく住宅の解体を余儀なくされた。

「こんな仕打ちを受けるなら、別の町に移ったほうがいいんじゃないか」。長男から説得された男性は「いつまでもアパートでの避難生活を続けるわけにはいかない」と仙台での住宅購入を決意した。震災から半年が過ぎた2011年9月頃のことだ。

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